アトピー性皮膚炎は5歳までに発症することが多く、世界の子どもにおける有症割合は約20%にのぼります。通常医師によって診断されますが、アトピー性皮膚は様々な症状を呈すため、医師によって診断が異なる可能性がありました。しかし、医師間の診断の一致度はこれまで検討されておらず、医師と質問票によるアトピー性皮膚炎の診断割合の比較もあまり行われていませんでした。
本研究では2名の皮膚科専門医によるアトピー性皮膚炎の診断の一致度の検討に加え、皮膚科専門医と過去1年間の受診における医師のアトピー性皮膚炎の診断割合の比較、皮膚科専門医とU.K. diagnostic criteria*1のアトピー性皮膚炎の診断割合の比較を行いました。
三世代コホート調査の参加者のうち、土日に仙台子どもけんこうスクエアで実施されたアトピー性皮膚炎に関する皮膚の健康調査(お肌チェック*2)に参加された子どもを対象としました。2名の皮膚科専門医によるアトピー性皮膚炎の診断の一致度についてカッパ係数を算出したところ、カッパ係数は0.78と高い一致度を示しました。1,638名の子どものうちアトピー性皮膚炎の割合は、皮膚科専門医による診断で24%、過去1年間の受診における医師の診断で11.9%、U.K. diagnostic criteriaを用いた診断で37.2%でした。過去1年間の受診における医師のアトピー性皮膚炎の診断割合は皮膚科専門医による診断割合よりも低く、アトピー性皮膚炎の症状と捉えていない可能性が示唆されました。また、U.K. diagnostic criteriaのアトピー性皮膚炎の診断割合は皮膚科専門医による診断割合よりも高く、アトピー性皮膚炎以外の皮膚疾患の症状をアトピー性皮膚炎として捉えている可能性が考えられました。
以上より、皮膚科専門医による皮膚観察がアトピー性皮膚炎の正確な診断に重要であることが示唆されました。引き続きお肌チェックで得られた精緻かつ多様な皮膚症状の情報を用い、アトピー性皮膚炎の病態解明を目指していきます。
*1 U.K. diagnostic criteria: アトピー性皮膚炎の診断を目的として開発されたツール。質問票への回答と医師や看護師等の観察者による皮膚観察の結果を組み合わせて診断する。
*2 お肌チェック:三世代コホート調査に参加している子どもを対象とし、東北大学大学院医学系研究科皮膚科学分野の協力のもと精緻かつ多様なアトピー性皮膚炎の診断・症状を取得することを目的とした調査。皮膚科専門医1〜2名が子どもの皮膚観察を行う。参考:調査開始時のお知らせ
書誌情報
タイトル:Skin health survey on atopic dermatitis among Japanese children: the Tohoku Medical Megabank Project Birth and Three-Generation Cohort Study
著者名:Chikana Kawaguchi, Maki Ozawa, Takanori Hidaka, Keiko Murakami, Mami Ishikuro, Fumihiko Ueno, Aoi Noda, Tomomi Onuma, Genki Shinoda, Masatsugu Orui, Taku Obara, Yumiko Ito, Takashi Kakinuma, Kazuhiro Kudoh, Hiroaki Ozawa, Satoshi Nakagawa, Masato Mizuashi, Ryoko Omori, Masatoshi Deguchi, Yumi Kanbayashi, Masayuki Asano, Toshiya Takahashi, Muneo Tanita, Masahiro Hara, Kenshi Yamasaki, Takayoshi Tadaki, Hiromi Suzuki, Katsuko Kikuchi, Kenichiro Tsuchiyama, Takenobu Ohashi, Shu Sasai, Motoko Honda, Taku Fujimura, Sadanori Furudate, Yoshiko Kagimoto, Maki Kawamura, Nobuko Tabata, Rika Chikama, Hiromi Komatsu, Yota Sato, Kayo Tanita, Yutaka Kimura, Shino Yusa, Hitoshi Terui, Hisayuki Tono, Yusuke Muto, Shinichi Kuriyama, Masayuki Yamamoto, Setsuya Aiba
掲載誌:Allergology International
掲載日:2024年10月18日
DOI: 10.1016/j.alit.2024.09.008