老化はすべての生物に共通する現象であり、人間においては細胞から全身にわたる機能低下や生理的変化として現れます。これにより、さまざまな病気のリスクが高まり、全体的な健康状態に影響を与えます。そのため、年齢とともに増加する病気を予防する観点から、生物学的な年齢を示すバイオマーカーや、同年代と比較して体がどの程度機能低下しているかを判断する基準が必要とされています。
血液は、採取時点の健康状態を反映する優れたサンプルであり、そのメタボローム解析結果は、病気と代謝物の関係を研究する上で重要な指標となり得ます。加齢は糖尿病や高血圧などの代謝性疾患と深く関連していることが知られていますが、実際には、これらの疾患の原因となる代謝異常は、症状が現れる何年も前から始まっています。例えば、比較的若い頃から代謝異常が徐々に蓄積し、やがて中高年期に動脈硬化として現れ、それがさらに心血管疾患へとつながるケースがあります。
本研究では、NMRで測定した血漿メタボロミクスデータを詳細に解析し、年齢別の代謝物濃度指標を明らかにしました。その際、加齢に伴う代謝パターンの変化について一般的な傾向と洞察を得るために、研究の範囲を意図的に単純化し、多くの参加者を対象に健康リスクや病気予防の観点から一般的な結論を導き出すことを目的としました。その結果は、ToMMoが運用している公開データベース「jMorp: Japanese Multi-Omics Reference Panel」に公開されています。
さらに詳細な解析により、男性では55~59歳から60~64歳、女性では45~49歳から50~54歳までが、代謝的に大きく変化する時期であることが明らかになりました。これらの結果は、性差による代謝物濃度の変化の違いを示すとともに、加齢と代謝性疾患の関係について新たな知見を提供します。
書誌情報
タイトル:Identifying critical age and gender-based metabolomic shifts in a Japanese population of the Tohoku Medical Megabank cohort
著者:Miyuki Sakurai, Ikuko N. Motoike, Eiji Hishinuma, Yuichi Aoki, Shu Tadaka, Mana Kogure, Masatsugu Orui, Mami Ishikuro, Taku Obara, Naoki Nakaya, Kazuki Kumada, Atsushi Hozawa, Shinichi Kuriyama, Masayuki Yamamoto, Seizo Koshiba & Kengo Kinoshita
掲載誌:Scientific Reports
掲載日:2024年7月8日
DOI:10.1038/s41598-024-66180-0