地域住民コホート調査(宮城)をもとにした抑うつ症状と家庭高血圧の関連に関する論文がHypertension Research誌に掲載されました。
昨年、私たちが実施した研究により、抑うつ症状がある人では、抑うつ症状のない人に比べて、仮面高血圧(診察室や検査室での血圧が正常範囲内であるにも関わらず、家庭で測定した血圧で家庭高血圧の基準を満たすもの)の人の割合が高いことを示しました。この先行研究では、抑うつ症状を有する人において家庭血圧を測定することの重要性が示唆されました。しかし、横断研究デザインを用いた研究であることから、抑うつ症状が家庭高血圧を引き起こすかどうか(因果関係)は不明でした。そこで、今回、時間的前後関係を明確化できる縦断研究デザインを用いることにより、抑うつ症状が家庭高血圧を引き起こすかどうかを検討しました。
本研究ではベースライン調査(2013年~2016年に行った1回目のコホート調査)時点で家庭血圧が正常範囲内(収縮期血圧135mmHg未満かつ拡張期血圧85mmHg未満)で、高血圧の治療中でない人を対象とし、自記式質問紙を用いて抑うつ症状(The Center for Epidemiologic Studies Depression Scale:CES-D)を評価しました。約4年後に追跡調査(詳細二次調査)を行い、家庭高血圧の基準(収縮期血圧135mmHg以上または拡張期血圧85mmHg以上)を満たした場合に家庭高血圧発症としました。抑うつ症状のある人(CES-Dスコア16点以上)と抑うつ症状のない人(CES-Dスコア16点未満)の2群に分け、家庭高血圧発症に差があるかを検討しました。
その結果、抑うつ症状がある人では、抑うつ症状のない人に比べて、家庭高血圧発症のオッズ比が統計学的に有意に高いことが示されました。一方、検査室で測定した血圧は両群に統計学的な有意な差がありませんでした。
以上より、抑うつ症状がある人は 家庭高血圧発症のリスクが高いことを示しました。抑うつ症状を有する人に家庭血圧を測定してもらい、その測定値をモニタリングすることで、家庭高血圧の早期発見、早期治療につながり、心疾患の予防に貢献できる可能性があります。
書誌情報
タイトル:Depressive symptoms as risk factors for the onset of home hypertension: a prospective cohort study
著者:Sayuri Tokioka, Naoki Nakaya, Rieko Hatanaka, Kumi Nakaya, Mana Kogure, Ippei Chiba, Kotaro Nochioka, Hirohito Metoki, Takahisa Murakami, Michihiro Satoh, Tomohiro Nakamura, Mami Ishikuro, Taku Obara, Yohei Hamanaka, Masatsugu Orui, Tomoko Kobayashi, Akira Uruno, Eiichi N. Kodama, Satoshi Nagaie, Soichi Ogishima, Yoko Izumi, Nobuo Fuse, Shinichi Kuriyama, Atsushi Hozawa
掲載誌:Hypertension Research
掲載日:2024年7月10日
DOI:10.1038/s41440-024-01790-9