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地域住民コホート調査から糖尿病の遺伝リスク、生活習慣、および家族歴の組み合わせと糖尿病発症に関する論文が掲載

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地域住民コホート調査をもとにしたポリジェニックリスクスコア(PRS)*1、生活習慣スコア、糖尿病の家族歴の組み合わせと糖尿病発症に関する論文がJournal of Atherosclerosis and Thrombosis誌に掲載されました。

糖尿病は生活習慣だけでなく遺伝リスクも関与する疾患とされています。主に欧米にて、遺伝リスクおよび生活習慣が糖尿病発症と関連することが報告されています。当機構でも、地域住民コホート調査にご参加いただいた方を対象に糖尿病のPRS、生活習慣スコア、家族歴を組み合わせて糖尿病有病との関連を明らかにしました。しかし、この研究は横断研究であるため、糖尿病により健康的な生活習慣に見直しをした方や、糖尿病と診断されたことで家族歴をより強く思い出すなど他の要因によって回答が変化する可能性があります。そのため、遺伝リスク、生活習慣、および家族歴と糖尿病の関連を明確にするためには縦断研究による検証が必要でしたが、そのような研究は国内外においてありませんでした。そこで、本研究ではバイオバンク・ジャパン*2で行われたゲノムワイド関連解析(GWAS)*3から得られた結果に基づいてPRSを算出し、健康的な生活習慣(非肥満*4、非飲酒、規則的な身体活動*5、低Gamma-glutamyl transferase*6)、家族歴を組み合わせて糖尿病発症の関連を検討しました。

本研究において、PRSと生活習慣はそれぞれ独立して糖尿病発症と関連しており、遺伝リスクが低い(PRSが低値)場合でも、不健康な生活習慣を有するほど糖尿病発症リスクが高い関連が認められました。一方で、健康的な生活習慣を遵守していても、遺伝リスクが高い(PRSが高値)場合、糖尿病発症リスクが高い関連が確認されました。また、糖尿病の家族歴を有する群では、遺伝的リスクが低く、健康的な生活習慣を遵守していても糖尿病発症リスクが高い関連が認められました。前者からは、個人の体質や家族歴に関わらず、健康的な生活習慣の遵守は糖尿病発症予防に重要であることが明らかになりました。後者からは、家族歴と生活習慣の情報にPRSを加えることで糖尿病発症リスクが高い者を特定することができ、健康的な生活習慣を有していても、PRSが高いまたは糖尿病の家族歴を有する方は定期的なスクリーニングや早期介入が糖尿病発症予防に必要な可能性が示されました。

*1 ポリジェニックリスクスコア(PRS):GWAS等で、疾患との関連が示唆されたゲノム多型サイトについて、高リスク多型がもたらす推定効果量と、各個人が持つ高リスク多型の数の積をすべて足し合わせて得られる数値。個人ごとに算出され、このスコアに基づいて、様々な疾患における遺伝的な発症リスクの高低を定量的に評価できる。疾患の有無だけでなく、血圧や血糖値などの連続的な測定値についても用いられる。
*2 バイオバンク・ジャパン:「ひとりひとりの体質に合った医療」をめざす研究の基盤として、47種類の病気の方を対象として約20万人の患者さんに協力いただいている世界最大級の疾患バイオバンク
*3 ゲノムワイド関連解析(GWAS):SNPを主としたヒトゲノムの全体をほぼカバーする数百万から数千万の変異情報について、形質と合わせて統計学的な処理を行うことで遺伝子と形質の関連性を調べる遺伝解析手法
*4非肥満: Body Mass Index(BMI)(体重(kg)を身長(m)の2乗で割った指標、体格の指標として広く用いられる)が25.0kg/m2未満と定義
*5 規則的な身体活動:中強度の身体活動を週150分以上および/または高強度の身体活動を週75分以上と定義
*6 Gamma-glutamyl transferase (GGT):肝機能指標として用いられており、飲酒や脂肪肝の代理マーカーとして使用され、特定健康診査でも検査が可能

書誌情報

タイトル:Genetic Risk, Healthy Lifestyle Adherence, and Risk of Developing Diabetes in the Japanese Population
著者名:Masato Takase, Naoki Nakaya, Tomohiro Nakamura, Mana Kogure, Rieko Hatanaka, Kumi Nakaya, Ippei Chiba, Ikumi Kanno, Kotaro Nochioka, Naho Tsuchiya, Takumi Hirata, Akira Narita, Taku Obara, Mami Ishikuro, Akira Uruno, Tomoko Kobayashi, Eiichi N Kodama, Yohei Hamanaka, Masatsugu Orui, Soichi Ogishima, Satoshi Nagaie, Nobuo Fuse, Junichi Sugawara, Shinichi Kuriyama, BioBank Japan Project;Koichi Matsuda, Yoko Izumi, Kengo Kinoshita, Gen Tamiya, Atsushi Hozawa, Masayuki Yamamoto, and the ToMMo investigators.
掲載誌:Journal of Atherosclerosis and Thrombosis
早期公開日:June 22, 2024
DOI:10.5551/jat.64906

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