―ゲノム解析情報データのリアルタイム伝送とオンライン会議のデータ伝送に量子暗号通信技術を適用―
東北大学東北メディカル・メガバンク機構(以下、ToMMo)、株式会社東芝(以下、東芝)、および東北大学病院は、ゲノム医療の一つであるクリニカルシークエンス向けに量子暗号通信技術を適用したシステムを構築しました。さらに、構築したシステムを用い、がん患者のゲノム解析情報(エクソームシークエンス注1)と、医師等の専門家がゲノム解析データを参照しながら議論するオンライン会議の情報の2種類のデータを量子暗号通信技術によって安全に伝送できることを実証しました(図1)。ゲノム医療分野における量子暗号通信技術を用いたシステムの構築・実証は世界で初めてとなります注2。
クリニカルシークエンスは、遺伝子の配列を超高速に読み出す次世代シークエンサーを用いて解析した患者のゲノムデータを検証し、その結果を医師等の専門家が、疾患の診断や治療方針の選択の補助として利用するゲノム医療分野の新たな検査方法です。今回の成果は、量子暗号通信技術のゲノム医療への適用ならびに、安全・安心なゲノム医療の確立に貢献します。
本研究の一部は、内閣府総合科学技術・イノベーション会議の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「光・量子を活用したSociety 5.0実現化技術」(管理法人:量子科学技術研究開発機構)によって実施されました。東芝、ToMMoおよび東北大学病院は、本成果の技術と実証内容の詳細を、8月10日~14日に開催される国際会議QCrypt 2020(10th International Conference on Quantum Cryptography)で発表します。
注1 エクソームシークエンス:ヒトの全ゲノム配列を網羅的に解析する全ゲノムシークエンス。全ゲノム上の既存のSNPを網羅的に解析するSNPアレイに対し、エクソームシークエンスはエクソン領域(ゲノムの中でタンパク質をコードする領域)のみを限定して解析することにより、効率的にエクソン上の変異 (SNV (SNP)/挿入欠失) を検出する手法。
注2 2020年7月東芝調べ
関連リンク
量子暗号通信技術を用いた全ゲノム配列データの伝送を世界で初めて実証【プレスリリース】