東北メディカル・メガバンク計画の三世代コホート参加者を対象に、母乳のヒトミルクオリゴ糖(HMOs)の濃度と子の精神神経発達や頭囲の増加との関連を評価し、一部のHMOsには児の精神神経発達や頭囲の増加と関連する可能性が示された研究成果が、国際科学誌Journal of Food Science誌に掲載されました。
母乳中のHMOsは、子の腸内細菌叢だけでなく、精神神経発達にも関連する成分であることが海外における複数の研究で示されていましたが、日本人を対象とした研究はありませんでした。また、HMOsには様々な種類がありますが、評価対象とするHMOsにあわせて測定法を確立する必要があります。本研究では、日本人における母乳中HMOs濃度の測定法を確立し、子の精神神経発達、および頭囲増加との関連を評価しました。
三世代コホート調査に参加された母乳栄養児とその母親150組を無作為に抽出しました。母乳栄養児は出生から6カ月以上の間、母乳のみで育てられた乳児を指します。母乳栄養児の母親から産後1カ月に採取された母乳を活用し、母乳中のHMOs(2’-フコシルラクトース[2’-FL]、3’-フコシルラクトース、3’-シアリルラクトース[3’-SL]、6’-シアリルラクトース、ラクトシアリルテトラサッカライドa、ラクトシアリルテトラサッカライドb、ラクトシアリルテトラサッカライドc、ジシアリルラクトNテトラオース[DSLNT])の液体クロマトグラフィー/質量分析法(LC-MS/MS法)による測定法を確立して、その母乳中濃度を測定しました。これら成分について母乳栄養児の生後1カ月、5カ月、9カ月までの頭囲の増加と、生後6カ月、1歳、2歳の各時点での精神神経発達指数(ASQ-3スコア)との関連を多変量解析により評価しました。
本研究により、日本人の母乳中の各種HMOsの濃度分布が明らかになりました。また、評価した8種のHMOsのうち、2’-FLは子の頭囲の増加ならびに精神神経発達と正の相関が観察されました。また、母乳の3’-SLとDSLNTは2’-FLの存在下で子の精神神経発達と正の相関が観察されました。今回得られた結果は、日本の乳幼児のよりよい成長・発達に役立つ知見となることが期待されます。
書誌情報
タイトル:Absolute quantification of eight human milk oligosaccharides in breast milk to evaluate their concentration profiles and associations with infants’ neurodevelopmental outcomes
著者名:Keigo Sato, Yoshitaka Nakamura, Kazuhito Fujiyama, Kinuko Ohneda, Takahiro Nobukuni, Soichi Ogishima, Satoshi Mizuno, Seizo Koshiba, Shinichi Kuriyama, Shinji Jinno
掲載誌:Journal of Food Science
掲載日:2024年12月10日
DOI:10.1111/1750-3841.17597