三世代コホート調査をもとにした世代間のヘマトクリットの関連についての論文がScientific Reportsに掲載されました。
ヘマトクリット(HCT)は血液検査の重要な項目の一つで、貧血等の指標です。先行研究では双子を対象とした研究からHCTの多寡に遺伝子の関与が示唆されました。しかしながら、世代間関連の検討を行った研究の成果発表は、これまで多くはありませんでした。そこで三世代コホート調査で収集された情報のうち、父母、祖父母に着目して世代間関連の検討を行いました。家系情報をもとにご参加いただいた方々を242組の父-父方祖父-父方祖母トリオ、587組の母-母方祖父-母方祖母トリオに分け、それぞれで年齢や喫煙歴、他の検査項目も考慮しながら世代間でHCTに関連があるかを解析しました。解析では、ランダム家族法と呼ばれる新しい手法を用いています。
これらの解析によって、父-父方祖父、父-父方祖母、母-母方祖母ではHCTの世代間関連が認められた一方で、母-母方祖父ではHCTの世代間関連がないという結果に至りました。この結果はHCTの遺伝に性差がある可能性を示唆しています。今後は、食生活やサプリメント摂取等の情報も考慮した詳細な解析、ゲノム情報による解析によって性差や遺伝・環境相互作用を検討していく必要があると考えています。
書誌情報
タイトル:Child-parent associations of hematocrit in trios of Japanese adulthood confirmed by the random family method: The TMM BirThree Cohort Study
著者名:Takuma Usuzaki, Mami Ishikuro, Masahiro Kikuya, Keiko Murakami, Aoi Noda, Fumihiko Ueno, Hirohito Metoki, Taku Obara, Shinichi Kuriyama
掲載誌:Scientific Reports
公開日:2024年8月16日
DOI:10.1038/s41598-024-69752-2