発表のポイント
・ 東日本大震災後の健康調査を受けた一般住民のうち、家庭血圧の高値が確認された方に対して、病院の受診を喚起する至急の結果回付を行う仕組みを構築しました。
・ 家庭血圧の高値が確認されたのは21,061人中256人でした。治療状況がわかった151人のうち6割は治療を受けていませんでしたが、至急結果回付後にはその中の6割が治療を開始しました。
・ 脳卒中・心筋梗塞などの原因となる高血圧症は、震災などのストレスで引き起こされることがあります。日々の家庭血圧の測定値を活用した血圧高値の至急結果回付が、対象となった方々の早期受診に結びつくことが確認されました。
概要
東北大学東北メディカル・メガバンク機構(以下、ToMMo)は2013年5月から大規模な健康調査を始め、個別化医療の実現に取り組んでいます。この健康調査のひとつとして宮城県において、診察室血圧と比較して正確で安定していると言われている家庭血圧計を用いた調査を行っています。
ToMMo地域医療支援部門の児玉 栄一教授らのグループは、この調査で異常値が出た場合、3ヶ月程度要している通常の結果通知に先だって、医療機関の受診を喚起するお知らせ(至急結果回付)を行う仕組みを構築しました。健康調査参加者のうち、家庭血圧の測定協力に参加いただいた21,061人の中で医療機関の受診が望ましいと判断された血圧高値の参加者は256人(1.2%)でした。うち治療状況がわかった151人の4割が治療中、残りの6割は、治療を中断、生活改善中、または、これまで血圧高値を指摘されたことがない方でした。また至急結果回付後のアンケートから、至急結果回付をお送りする前には治療を受けていなかった方の6割が治療を開始したことがわかりました。至急結果回付が、隠れた疾患の早期診断および早期治療につながりました。
本成果は科学誌JMA Journal誌に7月16日付で掲載されました。
論文情報
タイトル:Urgent Notification Intervention of Home Blood Pressure in Cohort Studies of The Tohoku Medical Megabank Project
(東北メディカル・メガバンク機構のコホート調査における家庭血圧高値に対する至急結果回付状を用いた介入)
著者:Eiichi N Kodama, Makiko Taira, Hideyasu Kiyomoto, Tomohiro Nakamura, Satoshi Nagaie, Shinichi Kuriyama, Atsushi Hozawa, Junichi Sugawara, Fuji Nagami, Akira Uruno, Jun Nakaya, Hirohito Metoki, Masaki Sakaida, Masahiro Kikuya, Yoichi Suzuki, Kiyoshi Ito, Yohei Hamanaka, Kichiya Suzuki, Shigeo Kure, Nobuo Yaegashi, Nobuo Fuse, Ritsuko Shimizu, and Masayuki Yamamoto
筆頭著者:東北大学災害科学国際研究所・東北メディカル・メガバンク機構 児玉栄一(教授)、東北メディカル・メガバンク機構 平良摩紀子(助教)
責任著者:東北大学メディカル・メガバンク機構 清水律子(教授)、東北大学メディカル・メガバンク機構 山本雅之(機構長)
掲載誌:JMA Journal
掲載日:2024年7月16日
DOI:10.31662/jmaj.2023-0215