東北メディカル・メガバンク計画地域住民コホート調査をもとにした東日本大震災後の宮城県沿岸部における高血圧治療中断リスクに関する論文がHypertension Research誌に掲載されました。
目的
自然災害等で被害を受けることにより、受療行動に影響を与える可能性があります。そこで本研究では、東日本大震災後の沿岸部被災地における高血圧治療中断リスクについて分析しました。
方法
東北メディカル・メガバンク計画地域住民コホート調査に参加し、調査票に回答してくださった方のうち、高血圧の治療状況を「現在治療中」または「治療を中断」と回答した9,218人を本研究の解析対象者としました。また、震災時にお住まいのご自宅の被害状況についても調査票で回答いただき、全壊(全壊流失を含む)、大規模半壊、半壊、一部損壊、損壊なし、被災地に居住していないのいずれか1つを選択していただきました。全壊(全壊流失)、大規模半壊、半壊いずれかと回答した方を「半壊以上群」、一部損壊と回答した方を「一部損壊群」、損壊なし、被災地に居住していないのいずれかと回答した方を「損壊なし群」と定義し分析しました。
結果及び結論
内陸部にお住まいの方全体と比べ、沿岸部にお住まいの方全体では、高血圧治療中断のオッズ比*が1.46と有意に高くなりました。また、内陸部にお住まいで「損壊なし」の方達と比べ、沿岸部にお住まいで「損壊なし」または「一部損壊」であった方達は、高血圧治療中断のオッズ比が1.62、1.69と有意に高くなりました。一方で、沿岸部にお住まいで「半壊以上」であった方達の高血圧治療中断のオッズ比は、内陸部にお住まいで「損壊なし」の方達と比較し1.08であり、統計学的に有意な差は認められませんでした。この理由としては、特に被害が甚大だった方達は、医療費免除等の公的支援を受けることができたことなどがあると考察しています。
*オッズ比とは、曝露とアウトカムの関連の強さを示す指標です。今回の研究に当てはめると、 お住まいの場所やご自宅の被害状況(曝露)と高血圧治療中断の有無(アウトカム)に統計的に意味のある関連が示されました。
書誌情報
著者名:Rieko Hatanaka, Naoki Nakaya, Mana Kogure, Kumi Nakaya, Ippei Chiba, Ikumi Kanno, Hideaki Hashimoto, Tomohiro Nakamura, Kotaro Nochioka, Taku Obara, Yohei Hamanaka, Junichi Sugawara, Tomoko Kobayashi, Akira Uruno, Eiichi N. Kodama, Nobuo Fuse, Shinichi Kuriyama, Atsushi Hozawa
公開日:2023年10月13日
DOI:10.1038/s41440-023-01454-0
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