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東日本大震災に伴う災害による健康影響に関する文献レビューが日本循環器病予防学会誌に掲載されました

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予防医学・疫学部門の寳澤篤教授らのグループによる、東日本大震災に伴う災害による健康影響に関する文献レビューの成果が日本循環器病予防学会誌に掲載されました。

2011年3月11日に発生した東日本大震災は東北地方太平洋沖沿岸部に壊滅的被害を与え、多くの犠牲者を出したと同時に、沿岸部の多くの医療機関が被災し、慢性的な医療職不足に陥り、地域医療体制がさらに危機的状況となりました。東北メディカル・メガバンク機構は被災した住民の方々に長期健康調査・支援を行うことで、被災した個人への結果回付及び自治体への調査結果の報告を通して個人ならびに地域への健康増進に貢献しています。

本研究では、東日本大震災で甚大な被害を受けた岩手県、宮城県、福島県の3県における大規模疫学調査に基づく健康影響に関する文献レビューを詳細に行いました。文献レビュー採択基準は以下です。

  • 1)東日本大震災に関する災害(地震、それによる津波、原発事故)による生活の変化(避難生活、仮設住宅等)による健康影響を調査している研究であること
  • 2)東日本大震災の前後比較、経年変化、比較群を置くことで震災影響を分析している研究であること
  • 3)関連分析研究(被災者を対象とした複数の要因間の関連を検討した研究)は含まないこと

文献レビュー採択論文を精査する過程で、それらを大別する6つの健康アウトカム指標;1)精神・心理、2)血液検査値・生理機能検査値、3)食習慣及び運動習慣、4)甲状腺がん発症・有病、5)甲状腺がん以外の疾患発症・有病、6)その他(1~5に分類されなかったアウトカム指標である痛み、社会的孤立等) に焦点をあて文献を整理しました。その結果、175編の文献が検索語を基に抽出され、最終的に48編の文献レビューを行いました(図)。

※「健康改善(4件)」はいずれも東日本大震災直後と比較して改善した結果
ToMMoの研究:Kuniyoshi Y, Kikuya M, Miyashita M, et al. Prefabricated Temporary Housing and Eczema or Respiratory Symptoms in Schoolchildren after the Great East Japan Earthquake: The ToMMo Child Health Study. Disaster Med Public Health Prep 2019;13(5-6):905-911

 

主な結果として、大うつ病などの増加、運動習慣の減少、循環代謝系の疾患(脳血管疾患、糖尿病、高血圧、メタボリック症候群等)の増加、さらに社会的孤立といった社会的影響も示されました。避難者において肥満や高血圧、糖尿病の発症リスクが高いことが報告されていました。しかし、これは震災後短期及び中期的な健康影響を報告しているに過ぎず、今後、動脈硬化性疾患、心疾患、脳血管疾患の発症を増加させるかどうか、当機構の調査を続ける必要があると改めて認識しています。

わが国では今後も大規模災害が発生する可能性が高いとされています。今後の大規模災害に備えるためにも、東日本大震災による健康影響の検討によって得られた健康アウトカムの発症の予防という被災者への教訓を適切に活かすことが望まれます。

書誌情報

タイトル:東日本大震災に伴う災害による健康影響に関する文献レビュー
著者名:五十嵐有香、髙瀬雅仁、中谷直樹、小暮真奈、畑中里衣子、菅野郁美、中谷久美、中村智洋、後岡広太郎、寳澤篤
掲載誌:日本循環器病予防学会誌 2021; 56 (3): 244-257

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