アトピー性皮膚炎は、罹患率も高く、よく知られている病気ですが、現在の診断基準によるアトピー性皮膚炎は、いくつかのパターンの湿疹を示し、その症状は多彩です。また、経過も様々で、小児期に発症し成長につれて症状が軽くなるグループ、症状が長引くグループ、さらに思春期以降に発症するグループとがあります。
アトピー性皮膚炎の原因としては、皮膚のバリア機能異常やアレルギー反応の起こしやすさに関する遺伝的背景が見付かっていますが、多彩な症状や経過との関連についてはまだ解明されていません。
病気の解明のためには、同じ条件で集めた多数の症例が必要ですが、これまでそのようなデータはほとんどありませんでした。
そこで私たちは、コホート調査参加者の皆さまのご協力を得て、2018年10月から「お肌チェック」という新しい調査を実施しています。
コホート調査参加者の皆さまへ
※この調査の対象者は次の条件を満たし、かつご希望される方のみとなります。
・ 三世代コホート調査に参加中のお子さまで、詳細二次調査の案内があった方
・ 地域支援仙台センター・仙台子どもけんこうスクエアに来訪可能で、土曜日・日曜日に調査参加できる方
◎ 調査方法
皮膚科専門医2名が皮膚の状態を観察します。また、首、手のひら、ひじの内側の写真を撮影します。最もかゆい所が、ひざの裏側、背中の場合には追加で撮影を行います。所要時間は、5~10分程度です。
◎ 参加のメリット
「お肌チェック」に参加いただいた方には、お帰りの際にアトピー性皮膚炎であるかどうかについて皮膚科専門医の所見をお知らせする回付票をお渡しします注1。アトピー性皮膚炎が疑われる方には、重症度とあわせてお知らせし、医療機関受診に役立つ情報や自宅でのケアの方法についての情報等を提供します。なお、結果の回付は断ることもできます。
(注1)お肌チェックの結果は、あくまでも1回の皮膚観察に基づくものです。アトピー性皮膚炎の確実な診断には、症状が繰り返し出現するかどうかを確認することが必要ですので、必ずかかりつけ医もしくはお近くの皮膚科医を受診し、対処法をご相談ください。
研究者の皆さまへ
◎この研究の目的
より精度の高いアトピー性皮膚炎表現型情報を得ることを目的とします。アトピー性皮膚炎のリスク群に対し、発症予測ならびに新たな治療法の開発につながる知見の発見が期待されます。
◎予定対象者数、研究期間
予定対象者数:子ども(児・同胞)約5,000人とその家族約3,000人
研究期間:2018年10月~2021年3月
「お肌チェック」は、東北大学アトピー性皮膚炎研究ネットワーク(TAReN)との共同研究です。この研究により得られた情報は、匿名化したうえで他研究機関に分譲可能なようインフォームド・コンセントを取得しています。皮膚科専門医1人以上が独立して皮膚観察及び本研究独自の調査票調査、皮膚の写真撮影と機械学習による評価を実施します。皮膚科専門医2名が観察を行う場合、独立性を担保するため相互に話し合うことなく観察します。なお、回付については2名の合議で作成します。観察はマニュアル化しており観察者に依らない均一な観察を行います。皮膚観察は頸部、四肢(主として手掌、肘窩、膝窩)、背部等に対して実施します。数多くの遺伝要因・環境・社会的要因と皮膚性状との関連性を検証する解析ストラテジーとしては、リスク予測式を構築して病気・重症化の予測(健康予報)とその人に最適な予防・治療を実現することを目指します。リスク予測式から明らかとなった環境要因に介入することで、個人に最適な病気の予測と罹患予防及び重症化予防を行っていきます。本研究では治療・介入は発生しません。ただし、現在医療機関を受診しておらず、かつアトピー性皮膚炎等の所見が認められた場合は医療機関の受診を勧奨します。現在アトピー性皮膚炎の治療のため医療機関を受診中の場合には、参加者にセカンド・オピニオンを提供し、ホームケアの方法等の知識を提供します。地域の皮膚科・小児科等の医師と事前及び研究進行中に綿密に連絡を取り合い、地域医療における診療に役立つよう十分に配慮します。