東北大学東北メディカル・メガバンク機構予防医学・疫学部門の 中谷直樹准教授と岡山大学大学院医歯薬学総合研究科精神神経病態学の藤原雅樹医員、稲垣正俊講師、山田了士教授ら、国立がん研究センターの藤森麻衣子室長、内富庸介部門長らの共同研究グループは、国民生活基礎調査の匿名データを利用した調査を実施し、高い心理的ストレスを抱えた人々は大腸・胃・肺がん検診の受診率が低いことを明らかにしました。
高い心理的ストレスは、長期的にみると様々な病気による死亡率の上昇につながり、がん死亡率の上昇にも関連することが知られており、健康格差をもたらす要因の1つとして大きな問題となっています。がん検診は疾病予防にとって重要ですが、わが国では心理的ストレスとがん検診受診の関連は不明のままでした。
本調査は、重度の心理的ストレスを抱える人々は、そうではない人々と比べて、過去1年間の大腸・胃・肺がん検診受診率が有意に低いことを明らかにしました。一方で、教育年数が相対的に短い場合(大学卒業未満)に、重度の心理的苦痛を抱えた人々は有意にがん検診受診率が低いことがわかりました。
本研究成果は10月27日(米国東海岸時間)、米国がん協会誌「Cancer」に掲載されます。
国民が疾病予防の機会を平等に享受するためには、高い心理的ストレスを抱える人々に対するがん検診受診の勧奨、受診支援等を含めた対策が重要です。がん検診による疾病予防の機会に格差が生じており、これらの人々を対象としたがん検診受診の勧奨や受診支援等の強化が急がれます。
■論文
Association between serious psychological distress and non-participation in cancer screening, and the modifying effect of socioeconomic status: analysis of anonymized data from a national cross-sectional survey in Japan
掲載誌: Cancer
DOI: 10.1002/cncr.31086
著者: Masaki Fujiwara, Masatoshi Inagaki, Naoki Nakaya, Maiko Fujimori, Yuji Higuchi, Kyoko Kakeda, Yosuke Uchitomi, Norihito Yamada
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