出生三世代ゲノムコホート研究における女性の妊娠前および妊娠中の漢方薬の使用実態に関する論文がPharmacoepidemiology and Drug Safety誌に掲載されました。
中国に由来する日本の伝統医学である漢方薬は、産科を含む臨床現場で現代医学と組み合わせて広く使用されています。しかし妊娠中の漢方薬使用の安全性に関する情報は世界的にも少なく、家系情報およびゲノム情報を考慮して妊娠中の漢方薬使用の安全性を評価することが可能な基盤はありませんでした。そこで、東北大学東北メディカル・メガバンク計画三世代コホート調査のデータを用いて、妊娠前および妊娠中の女性の漢方薬の使用実態を明らかにしました。
医薬品の使用時期を、
・「妊娠1年前から妊娠判明まで」(妊娠判明前)
・「妊娠判明から母親登録時調査票回答時点まで」(妊娠判明後妊娠初期)、
・「前回調査票回答から母親中期用調査票回答時点まで」(妊娠中期)
の3つに分類し、各期間における漢方薬の使用状況を集計しました。各期間に漢方薬を使用していた妊婦は、妊娠判明前は4.1%、妊娠判明後妊娠初期は4.5%、妊娠中期は4.5%でした。使用頻度が高かった漢方薬は、妊娠診断前は当帰芍薬散(1.0%)、妊娠判明後妊娠初期では小青竜湯(1.3%)、妊娠中期では小青竜湯(1.5%)であり、風邪の治療に用いられる葛根湯、小青竜湯、麦門冬湯が妊娠中に多く使用されていることが分かりました。妊娠中の使用による安全性のエビデンスが十分とは言えない生薬を含む漢方薬の使用も認められましたが、多くは妊娠判明後に使用が中止されていました。
出生ゲノムコホート研究において、妊娠中に使用される漢方薬の安全性や有効性についての研究が進むことが期待されます。
書誌情報
タイトル:The use of Japanese traditional (Kampo) medicines before and during pregnancy in Japan: the Tohoku Medical Megabank Project Birth and Three-Generation Cohort Study
著者名:Aoi Noda, Ryutaro Arita, Taku Obara, Satoko Suzuki, Minoru Ohsawa, Ryo Obara, Kei Morishita, Fumihiko Ueno, Fumiko Matsuzaki, Genki Shinoda, Keiko Murakami, Masatsugu Orui, Mami Ishikuro, Akiko Kikuchi, Shin Takayama, Tadashi Ishii, Shinichi Kuriyama
掲載誌:Pharmacoepidemiology and Drug Safety
早期公開日:2024年10月10日
DOI:10.1002/pds.70033