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日英のバイオバンクデータを活用して肥満の遺伝的構造を検討した研究がHeliyon誌に掲載

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東北メディカル・メガバンク計画三世代コホート調査、地域住民コホート調査、英国のUK Biobank (UKB)のデータを用いて、肥満の特性に応じた遺伝的構造を検討した研究がHeliyon誌に掲載されました。

先行研究において100を超える肥満関連遺伝子が特定されてきましたが、特定された全ての肥満関連遺伝子の変異が必要であるのか、あるいは、肥満集団は遺伝的にさまざまな質の (ヘテロジニアスな)集団の集合体であり、1つあるいは数個の遺伝子変異によって引き起こされるのかは不明でした。本研究では、日英のバイオバンクデータを使用し肥満関連要因でクラスターに分け、クラスターごとにゲノムワイド関連解析(GWAS)*1を実施することで、肥満の遺伝的構造を明らかにすることを目的としました。
本研究では2つのステップで解析を実施しました。Step-1として、三世代コホート調査と地域住民コホート調査の参加者を対象としてBody Mass Index(BMI)をアウトカムとしたGWASを実施しました。Step-2として、BMIが25以上の者を食事や運動、年齢など肥満と関連する変数を用いて5つのクラスタ―にクラスタリング*2しました。その後、各クラスターに属する対象者とBMIが25未満の対象者をそれぞれ統合し、5つのクラスターに応じてGWASを実施しました。最後に、UKBの参加者を対象に同様の解析を実施し、解析結果の再現を図りました。本研究のStep-1の結果として、FTOやBDNFといった代表的な肥満遺伝子が複数検出されました。Step-2ではStep-1で検出された肥満関連遺伝子が肥満の特性に応じたクラスターごとにそれぞれ分かれて検出されました。この現象はUKBの参加者を対象とした解析でも同様に確認されました。

本研究結果は肥満集団が遺伝的構造の異なるヘテロジニアスな集団の集合体である可能性を示すものです。肥満だけでなく、今まで多因子疾患とされていた疾患はそれぞれの特性ごとに遺伝的背景が異なる「多病気疾患」である可能性があります。疾患の特徴を表していると思われる変数を使いサブグループを見つけ出すことで、多くの疾患の個別化医療が大いに進展することが期待されます。

*1 ゲノムワイド関連解析(GWAS): Genome-Wide Association Studyの略。ゲノム全体を対象にSNP等をマーカーとして、患者と対照との間で比較する研究手法のこと 。
*2 クラスタリング: データの性質からデータのかたまり(クラスター)をつくる手法のことです。データの集合体の中から、ある基準を用いることで似たようなデータの集団を同定し、クラス分けを行います。

書誌情報

タイトル:Genome-wide association study based on clustering by obesity-related variables uncovers a genetic architecture of obesity in the Japanese and the UK populations
著者:Ippei Takahashi, Hisashi Ohseto, Fumihiko Ueno, Tomomi Oonuma, Akira Narita, Taku Obara, Mami Ishikuro, Keiko Murakami, Aoi Noda, Atsushi Hozawa, Junichi Sugawara, Gen Tamiya, Shinichi Kuriyama
掲載誌:Heliyon
掲載日:2024年8月8日
DOI:https://doi.org/10.1016/j.heliyon.2024.e36023

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