東北大学とイギリスのKing’s College Londonとの共同研究によって、三世代コホート調査における妊娠糖尿病とボンディングとの関連を検討した論文がPreventive Medicineに掲載されました。
妊娠糖尿病は妊娠中の高血圧合併や帝王切開のリスクを生じさせ、産後も2型糖尿病のリスクを高める疾患で、治療や食事など細やかな管理が必要です。妊娠糖尿病は母親のメンタルヘルスにも影響を与えることが報告されており、メンタルヘルスはボンディング(お子さんとの愛着形成)にも重要な要素であることから、今回三世代コホート調査のデータを用いて妊娠糖尿病とボンディングとの関連を検討しました。
本研究の結果、妊娠糖尿病の発症と産後1か月時点のボンディングとの関連は認められませんでした。また、本研究では妊娠糖尿病発症の有無でメンタルヘルスの指標に差は認められませんでした。先行研究では、妊娠糖尿病が産後6か月時点でのボンディングとは関連がなく、15か月時点のボンディングの低さと関連があったという報告があります。その報告では、母親の厳格な妊娠糖尿病の管理によるストレスは出産を契機に一旦軽減しますが、その後2型糖尿病発症に対して不安を感じるといったメンタルヘルスの変化がボンディングに関係している可能性が指摘されています。長期的な関連については三世代コホート調査でも引き続き検討が必要ですが、妊娠糖尿病発症と産後1か月時点のボンディングには直接的な関連はない可能性が示唆されました。
今後は妊娠糖尿病等の周産期合併症とボンディングとの関連がメンタルヘルスによって変化するかどうかをさらに検討していくことで、ボンディングを促すサポート方法等を見出すことが重要だと考えられます。
書誌情報
タイトル:The effect of gestational diabetes mellitus on postnatal mother-infant bonding: findings from the Tohoku Medical Megabank Project Birth and Three-Generation Cohort Study
著者名:Madeleine Benton; Mami Ishikuro; Taku Obara; Aoi Noda; Keiko Murakami; Shinichi Kuriyama; Khalida Ismail
掲載誌:Preventive Medicine
公開日:2024年8月14日
DOI:10.1016/j.ypmed.2024.108101