東北メディカル・メガバンク計画地域住民コホート調査において、震災による自宅損壊および心的外傷後ストレス反応と修正可能な認知症のリスク因子を調査した論文がGeriatrics and Gerontology International誌に掲載されました。
目的
自然災害は多くの健康問題を引き起こします。特に、認知症のリスクは災害後に増加すると報告されています。この研究では、地域在住高齢者において震災による住宅および心理的被害が既知の認知症の修正可能なリスク因子にどのように関連しているかを調査しました。
方法
地域住民コホート調査に参加された65歳以上の方、29,039人を本研究の解析対象者としました。参加者の自己申告に基づいて、住宅被害の程度(全壊またはそれ未満の被害)と心理的損傷(心的外傷後ストレス反応の有無)について評価しました。高齢期の修正可能な認知症のリスク因子には、うつ病、社会的孤立、身体活動の欠如、喫煙、糖尿病が含まれます。これらのデータをもとに、震災による被害と高齢期の修正可能な認知症リスク因子(喫煙、運動不足、糖尿病、抑うつ徴候、社会的孤立)の関連を解析しました。
結果及び結論
● 住宅被害: 全壊レベルの方は認知症リスク因子保有数が多く、その中でも抑うつ徴候や運動不足のリスク因子増加が見られました。
● 心理的被害: 心的外傷後ストレス反応を有する人は認知症リスク因子保有数が多く、全てのリスク因子で増加が見られました。
● 住宅被害・心理的被害により認知症リスク因子保有数が多い傾向は、年齢や性別、居住地域(内陸または沿岸市町村)を限定しても同様でした。
震災による住宅被害や心理的被害は、様々な認知症リスク因子の増加と関連していました。このため、震災後の高齢者に対するリスク低減のため多面的なサポートが必要と考えられます。
書誌情報
著者名:Ippei Chiba, Naoki Nakaya, Mana Kogure, Rieko Hatanaka, Kumi Nakaya, Sayuri Tokioka, Tomohiro Nakamura, Satoshi Nagaie, Nobuo Fuse, Taku Obara, Yuka Kotozaki, Kozo Tanno, Shinichi Kuriyama, Atsushi Hozawa.
掲載誌:Geriatrics and Gerontology International
早期公開日:2024年5月3日
DOI:http://dx.doi.org/10.1111/ggi.14867
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