・2021年、日本・オランダの一般地域住民の夫婦ペア総計約3万組を対象にした研究で生活習慣、医学検査値、疾病のさまざまな項目で配偶者同士の類似性を確認しました。
・一方、この類似性が年齢の相似性により説明されるのか不明であったため、今回、配偶者ペア間で観察された循環代謝リスク因子の類似性が、年齢の異なるランダムな男女ペア間で観察されるかどうかを検討しました。
・その結果、循環代謝リスク因子についてランダムな男女ペア間の類似性はほとんど見られませんでした。したがって、観察された配偶者ペア間の循環代謝リスク因子の類似性は年齢による相似性ではなく環境要因を共有していることにより説明されると考えられます。
・生活習慣や生活習慣病の予防介入戦略のひとつとして、配偶者ペアに焦点を当てることにより効果が最適化できる可能性があります。
詳細
【背景】著者らの先行研究において、日本とオランダの2ヶ国の公的バイオバンク情報を使用し、配偶者ペア間の循環代謝リスク因子の類似性を示しました (Nakaya N, et al. Atherosclerosis 2021;334:85-92)。しかし、配偶者ペアは年齢が近いことが多いため、この類似性が配偶者ペアであることと、年齢の相似性とどちらにより説明されるのか不明でした。
本研究の目的は、配偶者ペア間で観察された循環代謝リスク因子の類似性が、ランダムな男女ペア間で観察されるかどうかを検討することでした。
【方法】東北メディカル・メガバンク計画地域住民コホート調査(宮城)のベースライン調査データ(調査票情報、血液検査情報、生理検査情報)を用いた横断的研究で、5,391 組の配偶者ペアが含まれています。この配偶者ペアの男女を配偶者ペアと同じ年齢同士になるよう、男性に対し女性をランダムに割り付け、配偶者ペアと同じ年齢同士の新しい男女のペアを作成しました。統計解析はピアソンの相関分析または年齢調整ロジスティック回帰分析を使用して、ランダムな男女ペア間の循環代謝リスク因子の類似性を分析しました。
【結果】平均年齢は男性 63.2 歳、女性60.4 歳でした。連続変数として用いた循環代謝リスク因子(身長、体重、腹囲、BMI、血圧、HbA1c、総コレステロール、中性脂肪、HDL-C、LDL-C)におけるランダムな男女ペア間の相関係数は-0.007~0.071で、いずれも低い値でした。また、カテゴリー変数として用いた循環代謝リスク因子(現在喫煙、現在飲酒、十分な身体活動、高血圧有病、糖尿病有病、メタボリック症候群有病)におけるランダムな男女ペア間の一致のオッズ比※は0.94~1.08で、いずれも男女ペア間の有意な一致を示しませんでした。
【結論】本研究では循環代謝リスク因子についてランダムな男女ペア間の類似性はほとんど見られませんでした。著者らの先行研究で観察された配偶者ペア間の循環代謝リスク因子の類似性は年齢による相似性ではなく、環境要因を共有していることにより説明されると考えられます。生活習慣や生活習慣病の予防介入戦略のひとつとして、配偶者ペアに焦点を当てることにより効果が最適化できる可能性があります。
論文情報
タイトル: Similarities in cardiometabolic risk factors among random male-female pairs: a large observational study in Japan
著者:Naoki Nakaya, Kumi Nakaya, Naho Tsuchiya, Toshimasa Sone, Mana Kogure, Rieko Hatanaka, Ikumi Kanno, Hirohito Metoki, Taku Obara, Mami Ishikuro, Atsushi Hozawa, Shinichi Kuriyama
掲載誌:BMC Public Health
掲載日:28 October 2022
DOI: 10.1186/s12889-022-14348-6
用語説明
※オッズ比 :要因と曝露の関連の強さを示す指標です。今回の研究に当てはめると、ランダムな男性と女性のうち、男性の生活習慣・病気の有無(要因)と、女性の生活習慣・病気の有無(曝露)が一致しているかどうかを分析しました。その結果、一致性が示されませんでした。
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