東北大学東北メディカル・メガバンク計画三世代コホート調査をもとにした,肝臓の脂肪化および線維化マーカーと頸動脈壁肥厚および腎機能低下の関連を解析した論文がAnnals of Hepatology誌に掲載されました。
非アルコール性脂肪性肝疾患(Nonalcoholic Fatty Liver Disease; NAFLD)は肝硬変および肝がんといった重篤な肝疾患の発症リスクとなることに加え,心血管系や腎臓など肝臓以外の臓器の疾患に影響を及ぼすことが様々な研究から報告されています。しかしながら,「NAFLDと心血管系」「NAFLDと腎臓」といった個別の臓器に着目した検討が多く,肝臓の変化が肝臓外の組織に及ぼす影響の包括的な検討は必ずしも十分ではありませんでした。
本研究では,東北大学東北メディカル・メガバンク計画三世代コホート調査データを用いた横断的研究において,肝脂肪化マーカーであるFatty Liver Index(FLI)および線維化マーカーであるFibrosis-4 index(FIB-4)と,頸動脈壁肥厚および腎機能低下との独立した関連性を,同一の集団・解析において評価しました。
年齢および性別などの人口統計学的特性,心血管系疾患および腎疾患の他のリスク因子を組み入れたモデルにおいて,FLI高値と腎機能低下に独立した相関を認めました。一方,FLIと頸動脈壁肥厚に独立した関連は認めず,またFIB-4高値は頸動脈壁肥厚および腎機能低下のいずれとも独立した関連を示しませんでした。これらより,FLIが腎機能低下の潜在的なマーカーであることが確認されました。加えて肝脂肪化が腎機能低下に影響することが示唆されましたが,その因果関係を明らかにするためにさらなる研究が必要であると考えられます。
書誌情報
タイトル:Liver steatosis and fibrosis markers’ association with cardiovascular and renal damage in Japanese adults: The TMM BirThree Cohort Study
著者名:Toshiya Machida, Taku Obara, Mami Ishikuro, Keiko Murakami, Fumihiko Ueno, Aoi Noda, Tomomi Onuma, Fumiko Matsuzaki, Jun Inoue, Shinichi Kuriyama, Nariyasu Mano
掲載誌:Annals of Hepatology
掲載日:28 September 2022
DOI:10.1016/j.aohep.2022.100761