予防医学・疫学部門の村上 慶子講師らが執筆した妊婦における社会的孤立と不眠に関する論文がSleep Health誌に掲載されました。
心身ともに変化の激しい妊娠中は良質な睡眠の維持が困難ですが、妊娠中の睡眠は母児の健康に影響するため、重要な公衆衛生学的課題です。一般の成人では、社会的ネットワーク・社会的サポートの少ない者ほど睡眠に問題を有する割合が高いことが示されてきましたが、妊婦での関連は明らかではありません。そこで、三世代コホート調査の自記式調査票データを用いて、妊婦における社会的孤立と不眠の関連を検討しました。
妊娠中期の時点で、社会的に孤立している(Lubben Social Network Scale 短縮版 (LSNS-6)※12点未満)割合は19.7%、不眠症状あり(アテネ不眠尺度※※6点以上)の割合は37.3%でした。社会的に孤立している妊婦は、孤立していない妊婦と比較して不眠の割合が1.26倍高かったです。LSNS-6の下位尺度別にみると、家族から孤立している妊婦、友人から孤立している妊婦はいずれも、不眠の割合が高かったです。妊娠判明時の否定的な気持ち、低い教育歴、つわり症状あり、心理的ストレス反応あり(K6スコア5点以上)も不眠と関連していました。
社会的孤立を早期にスクリーニングし介入につなげることで妊娠中の不眠の予防・緩和につながる可能性が、本研究から示唆されました。
※Lubben Social Network Scale 短縮版 (LSNS-6):ネットワークサイズや接触頻度とともに情緒的・手段的サポートを評価する6項目(家族に関する3項目、友人関係に関する3項目)から成る尺度
※※アテネ不眠尺度:ICD-10 診断基準に基づいて作成された不眠尺度
書誌情報
タイトル:Social isolation and insomnia among pregnant women in Japan: the Tohoku Medical Megabank Project Birth and Three-Generation Cohort Study
著者名:Keiko Murakami, Mami Ishikuro, Taku Obara, Fumihiko Ueno, Aoi Noda, Tomomi Onuma, Fumiko Matsuzaki, Saya Kikuchi, Natsuko Kobayashi, Hirotaka Hamada, Noriyuki Iwama, Hirohito Metoki, Masahiro Kikuya, Masatoshi Saito, Junichi Sugawara, Hiroaki Tomita, Nobuo Yaegashi, Shinichi Kuriyama
掲載誌:Sleep Health
公開日:Available online 10 October 2022
DOI:10.1016/j.sleh.2022.08.007
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