予防医学・疫学部門の研究グループは、三世代コホート調査の結果から、お子さんが在胎週数相当の体格よりも小さく生まれるSmall for gestational(SGA)を予測するための方法を開発し、その論文がScientific Reports誌に掲載されました。
SGAは、妊婦さんのお腹の中でお子さんに酸素が十分でない状態を表す「胎児機能不全」や、死産などの危険因子であることが報告されています。海外で実施された疫学研究では、SGAを予測する統計学的なモデルが報告されていました。しかし、これまでに我が国においてSGAの予測モデルは報告されていませんでした。そこで、三世代コホート調査をもとに、妊娠初期(妊娠11週0日~妊娠17週6日)、妊娠中期(妊娠18週0日~妊娠21週6日)それぞれにおいて、SGAを予測するモデルとして、要因として考えられる項目を組み合わせてリスクスコアを検討しました。その結果、妊娠初期リスクスコアでは、妊婦の年齢、身長、妊娠初期の体格(Body Mass Index :BMI)、分娩歴、凍結融解胚移植による生殖補助医療技術、妊婦の出生体重、喫煙、妊娠初期の高血圧がリスクスコアを算出するために必要な指標として選択されました。また、妊娠中期リスクスコアでは、妊婦の年齢、身長、妊娠中期のBMI、妊娠中の体重増加、分娩歴、凍結融解胚移植による生殖補助医療技術、妊婦の出生体重、喫煙、妊娠中期の高血圧、妊娠中期の胎児推定体重が選択されました。妊娠初期と中期リスクスコアの予測精度を示すC統計量は、それぞれ0.658 (95%信頼区間:0.642-0.675)、0.725 (95%信頼区間:0.710-0.738)であり、妊娠中期リスクスコアによるSGAの判別能は、妊娠初期リスクスコアよりも優れていました。
妊婦健診のサポートツールとしてSGAの予測モデルを活用することで、より良い周産期管理につながる可能性があります。今後は、本研究で作成した予測モデルを社会実装するために取り組んでいきます。
書誌情報
タイトル:Risk scores for predicting small for gestational age infants in Japan: The TMM birthree cohort study
著者名:Noriyuki Iwama, Taku Obara, Mami Ishikuro, Keiko Murakami, Fumihiko Ueno, Aoi Noda, Tomomi Onuma, Fumiko Matsuzaki, Tetsuro Hoshiai, Masatoshi Saito, Hirohito Metoki, Junichi Sugawara, Nobuo Yaegashi & Shinichi Kuriyama
掲載誌:Scientific Reports
掲載日:26 May 2022
DOI:10.1038/s41598-022-12892-0