三世代コホート調査のデータをもとに、産前・産後の期間で心理的ストレスの有無と子どものアトピー性皮膚炎発症のリスクを解析した結果をまとめた論文が、2022年3月24日(木)(現地時間)にBMC Pregnancy and Childbirth誌の電子版に掲載されました。
アトピー性皮膚炎は5歳までの子どもでよくみられる皮膚疾患であり、世界の約20%の子どもが罹患していることが報告されています。これまでの研究から、子どもにおけるアトピー性皮膚炎発症の原因として、母親の産前・産後それぞれの心理的ストレスが指摘されています。しかし、産前・産後の両期間で心理的ストレスがあった場合のアトピー性皮膚炎発症リスクは検討されていませんでした。そこで本研究では、三世代コホート調査のデータを用い、産前・産後の母親の心理的ストレスと子どものアトピー性皮膚炎発症との関連を検討しました。
その結果、産前・産後両期間で心理的ストレスを感じなかった母親と比べて、両期間で心理的ストレスを感じた母親から生まれた子どもが2歳時点でアトピー性皮膚炎を発症するリスクは1.34倍高いことが明らかとなりました。また、産後のみの母親の心理的ストレスと子どものアトピー性皮膚炎発症においても1.23倍リスクが高くなりました。一方で、産前のみの母親の心理的ストレスと子どものアトピー性皮膚炎発症は関連がみられませんでした。
産前・産後両期間を通して、母親の心理的ストレスをスクリーニングし、支援していく必要性が示唆されました。日本では令和元年に産後ケア事業の実施が努力義務として法定化されたこともあり、今後も母親への長期的な支援が進められることが期待されます。
書誌情報
タイトル:Cumulative exposure to maternal psychological distress in the prenatal and postnatal periods and atopic dermatitis in children: Findings from the TMM BirThree Cohort Study
著者名:Chikana Kawaguchi, Keiko Murakami, Mami Ishikuro, Fumihiko Ueno, Aoi Noda, Tomomi Onuma, Fumiko Matsuzaki, Hirohito Metoki, Shinichi Kuriyama, Taku Obara
掲載誌:BMC Pregnancy and Childbirth
掲載日:24 March 2022
DOI:10.1186/s12884-022-04556-8