予防医学・疫学部門の村上慶子講師らが執筆した教育歴・所得と産後の危険飲酒に関する論文がEnvironmental Health and Preventive Medicine誌に掲載されました。
危険飲酒(現在の飲酒量を続けていくと将来障害を起こすリスクの高い飲酒)は、女性においても重要な公衆衛生学的課題のひとつであります。教育歴・所得の高い女性で危険飲酒の割合が高いことが多くの先進国から報告されている一方、日本ではこれらと異なり、教育歴の低い女性で危険飲酒の割合が高く、所得と危険飲酒の関連はみられないことが報告されています。しかし、産後の女性における関連を検討した研究は、数が少なく結果も一貫していません。そこで、三世代コホート調査のデータを用いて、教育歴・所得と産後1年時点の危険飲酒との関連を検討しました。
その結果、産後1年時点では3.6%の女性が危険飲酒(1日当たりの平均純アルコール摂取量20g以上)をしていました。教育歴の低い女性で危険飲酒の割合が高いという関連が明らかになりました。所得の低い女性で危険飲酒の割合が高いという関連は教育歴の低い女性でのみ確認され、教育歴の高い女性では所得と危険飲酒の関連はみられませんでした。
妊娠が判明すると多くの女性は禁酒または減酒をするため、産後は危険飲酒を予防するのに適した時期といえます。妊娠中の飲酒と比べると産後の飲酒には注意が払われにくいですが、本研究で明らかになった要因を考慮することで、産後の危険飲酒予防への効果的な介入につながる可能性があります。
書誌情報
タイトル:Associations of education and income with hazardous drinking among postpartum women in Japan: results from the TMM BirThree Cohort Study
著者名:Keiko Murakami, Mami Ishikuro, Fumihiko Ueno, Aoi Noda, Tomomi Onuma, Fumiko Matsuzaki, Hirohito Metoki, Taku Obara, Shinichi Kuriyama
掲載誌:Environmental Health and Preventive Medicine
掲載日:03 July 2021
DOI:10.1186/s12199-021-00991-9