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クリニカルバイオバンク検体を活用した血漿メタボローム解析による上皮性卵巣がんのバイオマーカー探索に関する論文がToxins誌に掲載

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ToMMoゲノム解析部門の菱沼英史助教(未来型医療創成センター(INGEM)兼任)ならびにクリニカルバイオバンクグループの島田宗昭准教授(医学系研究科、INGEM兼任)、ゲノム解析部門の小柴生造教授(INGEM兼任)、ToMMo機構長特別補佐の八重樫伸生教授(INGEMセンター長、医学系研究科長)らの研究グループは、クリニカルバイオバンクに保存された上皮性卵巣がん患者の血漿を用いた標的メタボローム解析を実施し、上皮性卵巣がんに特異的な代謝物プロファイルを明らかにしました。

上皮性卵巣がんは難治性婦人科がんの1つであり、有効なスクリーニング法が確立しておらず、早期発見は困難であり、予後不良とされています。したがって、診断バイオマーカーの特定と予後の予測は、上皮性卵巣がん治療において非常に重要な意義を有します。近年のゲノム解析技術の進歩にもかかわらず、上皮性卵巣がんで原因となり得るドライバー遺伝子の特定はいまだ十分とはいえません。一方、生体内に存在する代謝物の網羅的解析であるメタボローム解析は、個人毎の表現型の違いを比較的良く反映するとされ、疾患の発症や治療効果などを評価するバイオマーカーとしての有用性が着目されています。

本論文では、これまでにToMMoの大規模コホート研究で導入している定量メタボローム解析キットを用いて、上皮性卵巣がん患者80名の血漿中の624の代謝物を分析し、その代謝物プロファイルの違いをToMMoのコホート参加者の血漿検体の分析結果と比較しました。その結果、上皮性卵巣がん患者の血漿中においてリゾホスファチジルコリン、ホスファチジルコリン及びトリグリセリドを中心とした191の代謝物について有意な変動が認められました。また、予後が悪い上皮性卵巣がん患者ではトリプトファンとキヌレニンの濃度の比率(キヌレニン濃度/トリプトファン濃度)がそうでは無い患者に比べてより高くなることが示されました。

本論文の成果は、血漿メタボローム解析が上皮性卵巣がんの診断だけでなく、治療予後の予測や化学療法の応答性の評価にも役立つ可能性があり、ゲノム解析のみならず代謝物プロファイリングを活用することで各患者の病態に合わせた適切な個別化医療を提供する未来型医療への貢献が期待されます。

本論文は、2021年6月30日にToxins誌の電子版に掲載されました。

書誌情報

論文タイトル:Wide-Targeted Metabolome Analysis Identifies Potential Biomarkers for Prognosis Prediction of Epithelial Ovarian Cancer
著者名:Eiji Hishinuma, Muneaki Shimada, Naomi Matsukawa, Daisuke Saigusa, Bin Li, Kei Kudo, Keita Tsuji, Shogo Shigeta, Hideki Tokunaga, Kazuki Kumada, Keigo Komine, Hidekazu Shirota, Yuichi Aoki, Ikuko N. Motoike, Jun Yasuda, Kengo Kinoshita, Masayuki Yamamoto, Seizo Koshiba, Nobuo Yaegashi
掲載誌:Toxins
掲載日: June 30, 2021
DOI: 10.3390/toxins13070461
Abstract: https://www.mdpi.com/2072-6651/13/7/461
PDF Version: https://www.mdpi.com/2072-6651/13/7/461/pdf

関連リンク

東北大学医学系研究科
未来型医療創成センター

 

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