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質量分析計を用いるメタボロミクス解析に関する論文がPLoS ONE誌に掲載されました

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東北大学東北メディカル・メガバンク機構ゲノム解析部門のオミックス解析を専門とした研究チームは、大規模コホート研究における質量分析計(MS)を用いるヒト血漿中代謝物の網羅的メタボロミクス解析(G-Met)プロトコルを開発し、論文「Establishment of Protocols for Global Metabolomics by LC-MS for Biomarker Discovery」をオンライン学術誌PLOS ONEに発表しました。

■研究内容
生体内に含まれる代謝物(メタボローム)は、生活習慣や病気の発症の影響を受けて大きく変化することが知られています。従って、血液中のメタボロームを一斉に測定すること(網羅的メタボロミクス解析、G-Met)は、健康状態の把握に加え、それを通じて疾患の予防にも役立つと考えられます。MSは、メタボロームを網羅的に測定できることから、生活習慣の改善や疾患の予防に役立つ生体分子(バイオマーカー)の探索に効果的であるとされ、新規医療技術としての応用性が期待されております。しかしながら、MS を用いる G-Metは、得られたデータの再現性や検出された成分の同定等に課題が残されていたことから、特に大規模コホート研究や臨床研究に応用可能な、新規 G-Met プロトコルの開発が求められていました。

そこで当研究チームは、1) ロボットによる血漿検体の全自動前処理技術を導入し、2) 二種の高分解能型質量分析計(UHPLC-TOF/MS及びHPLC-FTMS)を組み合わせることで、より網羅的な化合物検出法を開発しました。さらに大規模解析は、数日間にわたって測定されるため、機器の状態が検出値に影響を与えることから、データの補正技術の開発が大きな課題でした。そこで我々は、 3) 長期間測定して得られたデータの変動を補正するソフトウェアQuantbolomeを独自に開発し、データ解析の戦略も含めた新規 G-Met プロトコルの構築に成功しました。

さらに研究チームは、血液に含まれるメタボロームが、採血後の環境に影響を受けて変化する可能性にも着目し、開発した G-Met プロトコルを応用することで、保管条件に応じて増加あるいは減少する血液中成分を明らかにしました。また、最も特徴的に変化する 40 成分(リゾリン脂質、ジペプチド、脂肪酸、コハク酸、アミノ酸類、糖類および尿酸等)を抽出して検討し、コホート研究や臨床研究に用いる血液検体の質を評価するための代謝物クオリティー・マーカー(QM)の開発に成功しました。

本研究により開発された G-Met プロトコルおよび QM は、大規模コホート研究あるいは臨床研究により得られた血漿検体を用いるバイオマーカー探索に広く応用されることが期待されます。

略語一覧:
MS, mass spectrometry
G-Met, global metabolomics
UHPLC-TOF/MS, ultra-high performance liquid chromatography quadrupole time-of-flight mass pectrometry
LC-FTMS, high-performance liquid chromatography Fourier transform mass spectrometry
QM, Quality Marker

【論文】
Establishment of Protocols for Global Metabolomics by LC-MS for Biomarker Discovery
Daisuke Saigusa, Yasunobu Okamura, Ikuko N. Motoike, Yasutake Katoh, Yasuhiro Kurosawa, Reina Saijyo, Seizo Koshiba, Jun Yasuda, Hozumi Motohashi, Junichi Sugawara, Osamu Tanabe, Kengo Kinoshita, and Masayuki Yamamoto
PLoS ONE 11(8): e0160555
Published: August 31, 2016
DOI: 10.1371/journal.pone.0160555
論文名邦訳:バイオマーカー探索を目的とした質量分析計によるヒト血漿中代謝物の網羅的メタボロミクス解析プロトコルの開発

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