小島要講師・長﨑正朗教授(インシリコ解析室)は、東京大学徳永勝士教授を中心としたチームの一員として日中韓国際共同研究に参画し、原発性胆汁性肝硬変、クローン病、ハンセン病におけるTNFSF15遺伝子周辺領域内の変異との発症・感染リスクの関係の一部を明らかにし、成果は国際電子学術誌Scientific Reportsに8月10日、掲載されました。
TNFSF15遺伝子は腫瘍壊死因子の遺伝子で、その変異が炎症性腸疾患の一つとして知られ難病指定されているクローン病との関係があることなどがこれまでにも報告されてきました。
今回の研究では、TNFSF15遺伝子の周辺領域内の変異について、日中韓3カ国で得られた原発性胆汁性肝硬変、クローン病、ハンセン病の3つの疾患についてそれぞれの変異データを統合解析した結果、共通する変異が、ハンセン病の感染リスク減少と有意に関連する一方で、反対に原発性胆汁性肝硬変とクローン病の発症リスク上昇と有意に関連することが分かりました。
本研究への貢献は、ToMMoが2013年11月にドラフト版完成を発表した日本人一般住民1,070人の全ゲノムリファレンスパネルをもとに、その精度検証などを目的に行われた共同研究公募に徳永教授が応募したことから得られました。本研究で国際的な成果が得られたことで、構築してきたリファレンスパネルについて、その精度の高さが裏付けられると共に、疾患原因を探求する研究に大きく貢献できることが示されました。
【論文情報】
Fine-mapping analysis revealed complex pleiotropic effect and tissue-specific regulatory mechanism of TNFSF15 in primary biliary cholangitis, Crohn’s disease and leprosy
『ファインマッピング解析により明らかとなった原発性胆汁性肝硬変、クローン病、ハンセン病におけるTNFSF15の複雑な多面的効果と組織特異的な制御機構について』
Scientific Reports 6, Article number: 31429 (2016)
Published online:10 August 2016
doi:10.1038/srep31429