予防医学・疫学部門の小暮 真奈助教らが執筆したオムロンヘルスケア社との共同研究の論文(単日あるいは複数日測定の尿ナトカリ比と高血圧有病率との関連)の論文がHypertension Research誌に掲載されました。
日本高血圧学会のガイドラインでは、高血圧予防のために減塩(ナトリウム)とカリウム摂取を勧奨していることからも、近年ナトリウムとカリウムの比(ナトカリ比)が注目されています。また、近年の先行研究からも尿ナトカリ比高値と高血圧との関連が報告されています。ナトリウム摂取量を正確に評価する方法として、24時間蓄尿がゴールドスタンダードと言われていますが、その場で簡単にかつ短時間で測定値を得ることは難しい状況でした。ところが近年の研究で、随時尿の複数回の測定実施により24時間蓄尿で評価するナトカリ比と高い相関があること、またオムロン ヘルスケア株式会社より尿ナトカリ計(HEU-001F, OMRON, Kyoto)が開発されたことにより、尿ナトカリ比値が簡単にかつ短時間で測定ができるようになりました。以上より、随時尿ナトカリ比の複数回測定が高血圧とより強い関連を示すことが考えられますが、大規模集団で長期測定による尿ナトカリ比と高血圧との関連を評価した研究はありませんでした。
そこで本研究では、単日あるいは連続複数日測定の随時尿からのナトカリ比値を用いて家庭血圧値による高血圧有病率との関連を検討することを目的としました。対象者は、東北メディカル・メガバンク計画の詳細二次調査参加者のうち、家庭血圧計と尿ナトカリ計(OMRON, HEU-001F)を貸与し10日間の尿ナトカリ比を測定した3,273人としました。収縮期血圧≧135mmHgかつ/あるいは拡張期血圧≧85mmHg、あるいは高血圧で通院中の者を高血圧と定義し、尿ナトカリ比を四分位に分け、1日目から10日間までの各尿ナトカリ比平均値と高血圧有病率のオッズ比について性別、年齢、Body Mass Index、飲酒状況を考慮して推定しました。その結果、尿ナトカリ比の単日測定と比べ、尿ナトカリ比の複数日測定で、高血圧との関連をより鋭敏に示したことが明らかになりました。今回の結果から尿ナトカリ比の複数日測定は家庭での高血圧を評価するための指標として非常に有用であることが示唆されました。
*本研究はオムロン ヘルスケア株式会社との共同研究です。
書誌情報
タイトル:Multiple measurements of the urinary sodium-to-potassium ratio strongly related home hypertension: TMM Cohort Study
著者名:Mana Kogure, Takumi Hirata, Naoki Nakaya, Naho Tsuchiya, Tomohiro Nakamura, Akira Narita, Ken Miyagawa, Hiroshi Koshimizu, Taku Obara, Hirohito Metoki, Akira Uruno, Masahiro Kikuya, Junichi Sugawara, Shinichi Kuriyama, Ichiro Tsuji, Shigeo Kure & Atsushi Hozawa
掲載誌:Hypertension Research
Published: 27 Sep 2019
DOI: 10.1038/s41440-019-0335-2
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