ゲノム解析部門の 小島要講師らと東北大学医学系研究科皮膚科学分野の山﨑研志准教授のグループによる日本人のスキンタイプに関するゲノムワイド関連解析(GWAS)の論文が、Journal of Investigative Dermatology誌に掲載されました。
本研究では、東北メディカル・メガバンク計画地域住民コホート調査参加者約1万人を対象として、日本人のスキンタイプに関連したGWASを行い、7つの関連遺伝子を同定しました。日本人スキンタイプに最も強く影響を与えるのはOCA2遺伝子で、OCA2遺伝子上に複数の一塩基置換(SNP)を持つ人が日焼けによって肌が赤くなるタイプに多いことも分かりました。また、スキンタイプの関連遺伝子としてこれまで報告がなかったメラニンの細胞内輸送に関連するRAB32遺伝子を見出しました。スキンタイプは日光による皮膚老化や発癌しやすさに影響するため、本研究成果が皮膚老化や皮膚発癌の予防研究に発展することが期待されます。
本研究の詳細内容
肌の色は、その色合いや日焼けのしやすさから幾つかのスキンタイプに分けられます。日本人のスキンタイプは日焼けのしやすさから、赤くなるが黒くならないI型、中間のII型、赤くならずに黒くなるIII型の3つの型に分けられ、スキンタイプに併せた遮光などの予防対策を行うことが若々しい皮膚の維持と健康な生活のために重要です。今回の研究では、東北メディカル・メガバンク計画の地域住民コホート調査参加者約1万人(宮城県、岩手県在住)を対象として、日本人のスキンタイプに関連したGWASを行い、日本人の日焼けに関連する7つの関連遺伝子を同定しました。同定された7つの関連遺伝子の中で日本人のスキンタイプに最も強く影響を与えているOCA2遺伝子では、欠失変異により白皮症(肌や髪の毛が真っ白になる状態)になることが知られていますが、本研究はOCA2遺伝子の少しの変化(一塩基置換:SNP)が日本人のスキンタイプにも影響することを見出しました。
OCA2遺伝子領域をさらに詳しく解析すると、複数箇所のSNPが日本人スキンタイプに関連することが明らかになり、OCA2遺伝子上に複数のSNPを持つ人が日焼けに弱い傾向にあるI型に多いことも分かりました。さらに、スキンタイプ・日焼けとの直接的な関連が知られていなかったRAB32遺伝子が日本人のスキンタイプに影響することも発見しました。RAB32は肌の色を決める主要な色素であるメラニンを細胞内で輸送する分子ですが、RAB32遺伝子のSNPがメラニン色素の移動しやすさに影響してスキンタイプを決めている事が予想されます。スキンタイプは日光による皮膚老化や発癌しやすさに影響することから、この研究の成果が皮膚老化や皮膚発癌の予防研究に発展することが期待されます。
書誌情報
タイトル:Susceptibility loci for tanning ability in Japanese population identified by genome-wide association study from Tohoku Medical Megabank Project cohort study
著者名:Kosuke Shido, Kaname Kojima, Kenshi Yamasaki, Atsushi Hozawa, Gen Tamiya, Soichi Ogishima, Naoko Minegishi, Yosuke Kawai, Kozo Tanno, Yoichi Suzuki, Masao Nagasaki, Setsuya Aiba
掲載誌:Journal of Investigative Dermatology
掲載日:25 January 2019
doi:10.1016/j.jid.2019.01.015