‐東北メディカル・メガバンク計画地域住民コホート調査の解析から‐
東日本大震災後、避難生活などによる生活環境の変化に伴う身体活動量の減少が指摘されています。また、メタボリック症候群や心理的苦痛、抑うつ症状等において震災の影響が明らかになりつつあります。
東北大学東北メディカル・メガバンク機構個別化予防・疫学分野の寳澤篤教授らのグループは、東日本大震災による家屋の被害の程度とその影響に着目し、2013年から2016年に得た地域住民コホート調査参加者のデータ解析をもとに、被害の大きさが生活習慣や心身の健康状態に影響を及ぼしていること、そして、健康の指標として度々扱われるBMI値と交通機関へのアクセスに関連がある可能性を明らかにしました。
数年を過ぎてなお震災の影響が表れていることが研究結果として示され、未だ被災者への健康施策が重要であること、今後引き続き様々な影響について調査することの必要性が示されました。また、より影響が顕著である層が明らかになったことにより、効果的かつ効率的な対策への指針となると考えます。
発表のポイント
東北メディカル・メガバンク計画の地域住民コホート調査参加者の調査データについて分析した結果、東日本大震災後の生活習慣について現時点において次のことが明らかになった。
・ 震災による家屋の被害の程度が大きい者ほど、震災後の生活において平均歩数が少ない。
・ 震災による家屋の被害の程度が大きい者ほど、メタボリック症候群の構成要素である、腹囲増大、高血糖、高脂質、高血圧に該当する者が多い傾向がある。
・ 家屋被害と関わらず、自宅から最寄り駅までの距離が遠い者ほどBody Mass Index(BMI)が高値の傾向がある。
被災の状況が生活習慣等に影響を及ぼしつつあることが明らかになり、また、居住地と生活習慣に関連があることも示唆された。本成果は、今後の被災者への生活指導を含む健康施策の立案と実行にあたり有益なものと考えられる。
*これらの研究成果は2018年2月1日~3日に開催された“第28回 日本疫学会学術総会”にて発表されました。
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