‐世界初の三世代の家系情報付き出生コホート調査が7.3万人のリクルート完了。初期的な解析結果‐
東北メディカル・メガバンク計画が実施してきた三世代コホート調査は、世界初の三世代の家系情報付きの出生コホート調査であり、世界最大規模の三世代のコホート調査でもあります。平成29年3月31日をもって参加受付が終了、6月末で全ての妊婦さんの出産が終わり、目標とした70,000人を上回る総計73,000人以上の方が登録しました。解析から、妊娠がわかってからの妊婦さんの喫煙状況やパートナーの喫煙状況、ヘリコバクター・ピロリ陽性率、スギ花粉特異的IgE陽性率、葉酸サプリメントの摂取割合、東日本大震災時に住んでいた自宅の被害状況等がわかりました。なお震災時に住んでいた自宅の被害を経験した妊婦さんは、被害のなかった妊婦さんに比べると、妊娠前の肥満および夫/パートナーの喫煙および祖父母との同居の割合が高い(オッズ比が高い)ことが判明しました。また、妊婦さん自身の喫煙割合も高い(オッズ比が高い)傾向がありました。
ポイント
・東北メディカル・メガバンク計画で開始した世界初の三世代の家系情報付き出生コホート調査は、目標とした70,000人を上回る総計73,000人以上の方の登録を達成。
・本調査に登録した妊婦さんは、登録期間中の宮城県の妊婦数の中で大きな割合を占めており、対象者の偏りの少ない結果が得られることが期待できる。また家系情報の組み合わせ単位であるトリオ*1の組数が1万組以上であり、今後の疾患の関係の解明に有利なコホートを形成できた。
・震災時に住んでいた自宅の被害を経験した妊婦さんは、被害のなかった妊婦さんに比べると、妊娠前の肥満、祖父母*2との同居の割合が高くなっていた(オッズ比が高い)。年齢・地域を補正しても同様の結果だったので、肥満は自宅被災によるストレスのため、同居は物理的に住む場所がなくなったため、震災後増加している可能性がある。また、夫/パートナーの喫煙割合が高くなっており(オッズ比が高い)、妊婦さん自身の喫煙割合も高い(オッズ比が高い)傾向があったが、震災後に喫煙割合が増加したかどうかは不明。
・内陸の地域であっても家屋の被害が一定程度認められ、震災の影響が全県的に存在することがうかがえる。
*1:子どもと両親の3人の組み合わせ。トリオの組数が多いほど家系情報を利用した疾患関連遺伝子の絞り込みに有利。
*2:胎児の祖父母
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