東北大学大学院医学系研究科の小林枝里助教(医化学分野)、山本雅之教授(医化学分野・東北メディカル・メガバンク機構 機構長)らは、酸化ストレスなどから細胞を保護する転写因子Nrf2が、炎症を抑制する仕組みを解明しました。これまでは、Nrf2は主として活性酸素種を減らすことにより炎症を軽減しているものと考えられていましたが、今回の成果により、Nrf2は主に炎症を増悪させるサイトカインであるインターロイキン6(IL-6)やインターロイキン1b(IL-1b)の遺伝子の発現を阻害することで、炎症を抑えていることがわかりました(図)。この結果は、Nrf2を活性化する化合物が抗炎症薬としても利用可能であることを示しています。また、Nrf2を活性化させる細胞を保護する効果も期待できます。今回の成果によって、Nrf2による炎症制御機構の理解が進み、Nrf2の活性化剤を用いた安全で副作用の少ない抗炎症薬の開発が発展することが期待されます。Nrf2を活性化する化合物(例:スルフォラファン等)は食品やサプリメントにも含まれていることから、比較的安全性が高い物質と考えられます。この成果は2016年5月23日(日本時間23日18時)以降に英国科学雑誌「Nature Communications」のオンライン版で公開されました。
【論文題目】
Nrf2 suppresses macrophage inflammatory response by blocking proinflammatory cytokine transcription
「Nrf2は炎症性サイトカイン遺伝子の発現を阻害することで炎症を抑制する」
図:Nrf2による炎症性サイトカイン遺伝子の抑制
本研究では、Nrf2による炎症抑制のメカニズムを明らかにするため、マクロファージでのNrf2標的遺伝子を解析し、Nrf2がIL-6やIL-1b遺伝子の発現を阻害することで炎症を抑制することを明らかにしました。