東北大学東北メディカル・メガバンク機構(ToMMo)予防医学・疫学部門は、岩手医科大学いわて東北メディカル・メガバンク機構(IMM)の生体情報解析部門とイノベーション推進・人材育成部門の合同研究チームとともに、東北メディカル・メガバンク計画の参加者の皆様と岩手・宮城両地域住民の皆様(対象地域:陸前高田、大船渡、名取、東松島)がご自身の遺伝学的検査*1の結果を知りたいと思っているかどうかについての調査研究を行いました。
調査は、20歳以上の東北メディカル・メガバンク計画のコホート調査参加者の方(G1)1,600名と、岩手・宮城両地域住民の方(G2)10,000名を対象としてアンケートを郵送する方法で行いました。有効回答であったG1の1,031名、G2の2,314名の結果を解析しました。(質問票の返却率は、G1が70%、G2が26%でした)
有効回答の中で、G1の88%、G2の82%がご自身の遺伝学的検査の回付*2を希望されていました。結果が知りたいと希望された方のうち、生活習慣病に関する遺伝学的検査結果の回付を希望されたのは、G1の85%、G2の84%でした。一方で、成人発症で治療法のない疾患に関する遺伝学的検査結果の回付を希望されたのはG1の41%、G2の32%でした。
本研究は、バイオバンクの参加者の方に個人の遺伝学的検査の結果や偶発的所見*3をお知らせするかどうかを考えるための重要な情報の一つであり、より良い結果回付を実現するために役立つことが期待されます。
この成果は国際科学雑誌 Journal of Human Genetics に2017年8月10日付で発表されました。
【書誌情報】
論文題名:
Population-based biobank participants’ preferences for receiving genetic test results
日本語題名:住民バイオバンク参加者の遺伝学的検査結果回付への需要
掲載誌: Journal of Human Genetics
著者:Kayono Yamamoto, Tsuyoshi Hachiya, Akimune Fukushima, Naoki Nakaya, Akira Okayama, Kozo Tanno, Fumie Aizawa, Tomoharu Tokutomi, Atsushi Hozawa and Atsushi Shimizu
doi: 10.1016/j.mayocp.2014.03.015
【用語解説】
*1. 遺伝学的検査:ヒト生殖細胞系列における遺伝子変異もしくは染色体異常に関する検査、およびそれらに関連する検査(日本医学会「医療における遺伝学的検査に関するガイドライン」(2011年2月)より引用)
*2. 回付:結果を本人に伝えること
*3. 偶発的所見(incidental findings (IFs)):当該ゲノム解析の本来の目的を外れる所見