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大規模コホートデータから妊娠高血圧症候群を高精度に病型分類(フェノタイピング)するアルゴリズムの開発に関する論文が掲載

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ToMMoで推進している三世代コホート調査は、出生コホートと家系情報付き三世代コホートの両研究デザインを融合させた世界初の7万人規模の家系付きのゲノムコホート研究で、産科疾患の個別化予防の研究が進められています。

このたび、三世代コホート調査の大規模コホートデータから、収集した妊婦健診のカルテの情報を使用して、妊娠高血圧症候群の患者を同定し、高精度に病型分類(フェノタイピング)※1するアルゴリズムを開発し、Scientific Reports誌で発表しました。

発表のポイントは次の3つです。
・米国と日本の診断基準に従い、妊娠高血圧症候群の2つの病型分類(フェノタイピング)のアルゴリズムを開発し、プログラムで実装した。
・開発したフェノタイピングアルゴリズムを、三世代コホート調査の母親に適用し、約2万人規模の病型分類を行った。
・約2万人のうち病院を受診した252人の医師の診断との比較で、フェノタイピングアルゴリズムは、0.90以上の高い陽性・陰性的中率※2と、0.72以上の感度※2を示した。

妊娠高血圧症候群は、2〜8%の妊婦が罹患する疾患で、妊婦の妊娠中の様々な合併症だけでなく、児の生涯の健康に影響を与える可能性のある低出生体重の主要な原因となり、妊婦自身の将来の高血圧のリスク因子にもなる、母児の生涯の健康に影響を及ぼす可能性のある重要な疾患です。妊娠高血圧症候群は主に、合併症リスクや発症機序の異なる3つのサブグループに分類される一方、正確かつ大規模に病型を同定することが難しく、健康社会の実現のための様々な研究の実施には、これらを満たすフェノタイピングアルゴリズムは重要です。

今回、ToMMoの荻島創一教授の研究グループでは、米国と日本の診断基準に従い、二つのフェノタイピングアルゴリズムを構築、プログラムで実装しました。(構築したアルゴリズムでは、血圧などの比較的取り扱いやすいデータの他に、多くの情報が含まれる取り扱いの難しい臨床所見情報から患者の病態を同定することで、精度向上を実現しました)

開発したフェノタイピングアルゴリズムの検証として病院を受診した252人について、2名の医師による診断との比較を行い、最大で陽性的中率および陰性的中率が0.96、感度が0.75と、高い性能を示しました。これは、開発したフェノタイピングアルゴリズムが、大規模なフェノタイピングに適用可能であることを示しており、ハイスループットかつ高精度な妊娠高血圧症候群のフェノタイピングにより、健康社会実現のための多くの研究が促進されることが期待されます。

【図 1】妊娠高血圧症候群のフェノタイピングアルゴリズムの開発とその性能評価 本研究では、診断ガイドラインに基づくフェノタイピングアルゴリズムを開発、大規模コホートに適用し、医師の診断との間でバリデーションを行うことで性能評価を実施した。

また、構築したアルゴリズムにより、三世代コホート調査参加者約23,000人の母親の病型分類(フェノタイピング)を実施し、米国の診断基準に基づくアルゴリズムでは1,781人(7.93%)、日本の診断基準に基づくアルゴリズムでは、1,813人(8.08%)の妊娠高血圧症候群の患者とその病型を同定しました。

  米国の診断基準に基づくアルゴリズム 日本の診断基準に基づくアルゴリズム
妊娠高血圧症 890人 (3.97%) 825人 (3.68%)
加重型妊娠高血圧腎症 304人 (1.35%) 336人 (1.50%)
妊娠高血圧腎症 587人 (2.61%) 625人 (2.90%)
慢性高血圧 542人 (2.41%) 510人 (2.27%)
正常血圧 20,129人 (89.65%)
合計 22,452

【表 1】フェノタイピングアルゴリズムで同定した妊娠高血圧症候群の病型ごとの人数
開発したフェノタイピングアルゴリズムにより、三世代コホート調査参加者の母親の妊娠高血圧症候群の病型分類を実施した。

フェノタイピングアルゴリズムにより同定した妊娠高血圧症候群の患者やその病型の割合は、先行研究で示されている有病率と同程度であることと、アルゴリズムが高精度に病型分類が可能であることから、大規模な病型分類の困難な妊娠高血圧症候群のフェノタイピングにおける有用性を示しました。

用語説明

※1病型分類:大規模データから特定の疾患の患者と、そのサブタイプを同定すること。

※2陽性的中率、陰性的中率、感度:アルゴリズムの性能の指標であり、最大は1.0である。

書誌情報

タイトル:Development of phenotyping algorithms for hypertensive disorders of pregnancy (HDP) and their application in more than 22,000 pregnant women
「大規模コホートデータから高精度に妊娠高血圧症候群とその病型の同定を行うフェノタイピングアルゴリズムを開発した」

著者:
○東北大学東北メディカル・メガバンク機構 水野聖士、永家聖、石黒真美、小原拓、田宮元、栗山進一、八重樫伸生#、山本雅之#、菅原準一#†、荻島創一
○東京医科歯科大学医療データ科学推進室 田中博
○大阪母子医療センター 和形麻衣子
#東北大学大学院医学系研究科を兼任、
†鈴木記念病院を兼任

掲載誌:Scientific Reports

公開日:2024年3月15日

DOI:10.1038/s41598-024-55914-9

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