三世代コホート調査をもとに、周産期うつ症状の程度の経時的なパターンと遺伝的要因を検討した論文がDepression and Anxiety誌に掲載されました。
周産期うつ症状はお母さんの約20%に発症し、日常生活や育児に支障をきたすこともあります。これまでの研究では、周産期うつ症状の程度の経時的なパターンによって、原因となる環境要因や長期的な影響が異なることが報告されてきました。しかしながら遺伝的要因に関しては研究が少なく、未だ結論がでていませんでした。
今回の研究では、東北メディカル・メガバンク計画三世代コホート調査にご協力いただいたお母さんを対象に、妊娠中に2回、産後2回の計4回のアンケートを実施し、周産期うつ症状の程度の経時的なパターンを推定しました。遺伝情報との関連を網羅的に検討した結果、周産期うつ症状の程度の経時的なパターン毎に特異的な遺伝情報の違いが発見されました。また、遺伝的にうつ病のリスクが高い方は妊娠中や産後1か月以内に周産期うつ症状が強くなる傾向があり、遺伝的に月経前症候群のリスクが高い方は産後1か月以降に周産期うつ症状が強くなる傾向があることが明らかになりました。
この研究により、周産期うつ症状の程度の経時的なパターンによって遺伝的要因が異なることが明らかになりました。遺伝的要因に応じた予防や治療の可能性が示唆されます。
書誌情報
タイトル:Risk Factors, Prognosis, Influence on the Offspring, and Genetic Architecture of Perinatal Depression Classified Based on the Depressive Symptom Trajectory
著者名:Hisashi Ohseto, Ippei Takahashi, Akira Narita, Taku Obara, Mami Ishikuro, Natsuko Kobayashi, Saya Kikuchi, Xue Li, Aoi Noda, Keiko Murakami, Gen Tamiya, Junichi Sugawara, Hiroaki Tomita, and Shinichi Kuriyama
掲載誌:Depression and Anxiety
公開日:2024年3月15日
DOI:10.1155/2024/6622666