東北メディカル・メガバンク計画地域住民コホート調査をもとにした、脂肪量指数と除脂肪量指数の組み合わせとlow-density lipoprotein(LDLコレステロール)に関する論文がJournal of Atherosclerosis and Thrombosis誌に掲載されました。
LDLコレステロールは、ホルモン産生、細胞膜の形成などの役割を担いますが、増えすぎると動脈硬化を引き起こし、心筋梗塞や脳梗塞を発症させることが知られています。またBody mass index(BMI)*1が高いほど、LDLコレステロールも高いことが知られています。しかし、BMIは体組成(脂肪量や筋肉)を区別することができません。脂質は、脂肪細胞に貯蔵されますが、過剰に蓄積されると内分泌や免疫障害を引き起こし、LDLコレステロールの上昇を引き起こすことがよく知られています。一方で、除脂肪の主な構成要素である骨格筋は、脂肪酸代謝の主要な臓器であることや、骨格筋から放出される様々な生理活性物質が脂質代謝に影響を与える可能性が示唆されています。しかし、脂肪量、除脂肪量の両者を考慮して、体組成の違いにおけるLDLコレステロールの関連を検証した報告はありませんでした。そこで、本研究では脂肪量を身長の2乗で除した脂肪量指数と、除脂肪量を身長の2乗で除した除脂肪量指数の四分位(小さい順に並べ、均等に4つの群に分けたもの)の組み合わせと高LDLコレステロール血症の関連を検討しました。
本研究において、脂肪量指数が高いほどLDLコレステロールの値が高く、除脂肪量指数が高いほどLDLコレステロールの値が低いことが明らかになりました。除脂肪量指数が高く脂肪量指数が低い体格(筋肉質体格)では、高LDLコレステロール血症の有病率が最も低く、除脂肪量指数が低く脂肪量指数が高い体格(肥満体格)では、高LDLコレステロール血症の有病率が最も高くなっていました。また、同程度のBMIであっても脂肪量指数または除脂肪量指数の違いにより、高LDLコレステロール血症の有病率は異なることが明らかになりました。
今後は、長期的な追跡調査により、脂肪量や除脂肪量の増減が、LDLコレステロールに与える影響を明らかにしていく予定です。
*1 Body Mass Index(BMI):体重(kg)を身長(m)の2乗で割った指標、体格の指標として広く用いられる。
書誌情報
タイトル:Relationships of Fat Mass Index and Fat-Free Mass Index with Low-Density Lipoprotein Cholesterol Levels in the Tohoku Medical Megabank Community-Based Cohort Study
著者:Masato Takase, Tomohiro Nakamura, Naoki Nakaya, Mana Kogure, Rieko Hatanaka, Kumi Nakaya, Ippei Chiba, Ikumi Kanno, Kotaro Nochioka, Naho Tsuchiya, Takumi Hirata, Taku Obara, Mami Ishikuro, Akira Uruno, Tomoko Kobayashi, Eiichi N Kodama, Yohei Hamanaka, Masatsugu Orui, Soichi Ogishima, Satoshi Nagaie, Nobuo Fuse, Junichi Sugawara, Yoko Izumi, Shinichi Kuriyama, Atsushi Hozawa, the ToMMo investigators
掲載誌:Journal of Atherosclerosis and Thrombosis
早期公開日:2024年2月6日
DOI:10.5551/jat.64535