嗅覚機能の低下は、認知機能障害のリスクと関連することが知られています。従来に比べて少ないにおい種(2種類)、複数の臭気強度を用いた嗅覚検査が、軽度認知障害の早期検出に有用である可能性を示した論文がこの度、Journal of Alzheimer’s Disease Volume 95 Number 4に掲載されました。
ToMMoの脳と心の健康調査のアドオンコホートとして、バニラ、雑巾、キャラメル、スペアミント、靴下、黄桃の6種類のにおいを用いた嗅覚検査を実施しました(2019年8月27日~2021年3月30日)。
参考:嗅覚と遺伝子多型、嗅覚と脳画像・認知機能に関するアドオンコホートを開始【プレスリリース】
このアドオンコホートから得られた、認知機能障害が疑われるか否かを表す識別データ(認知機能検査MoCA-J*スコアをもとに作成)と嗅覚検査データの間の関連性を、年齢、性別、教育期間、喫煙歴を調整変数としたロジスティック回帰により分析しました。6種類のにおいで取り得るすべての組み合わせ(63通り)について、それぞれの合計スコアを嗅覚検査データとして検証した結果、スペアミントと靴下のにおいの組合せが認知機能障害の識別性能が高いこと、特に、60-74歳の女性が、その関連性が強いことを統計的に示しました。本結果が、少ないにおい種を用いた簡便な嗅覚検査による軽度認知障害の早期検出に貢献することを期待しています。
本研究は豊田中央研究所との共同研究で実施されました。
*MoCA-J:The Japanese version of the Montreal Cognitive Assessment
書誌情報
タイトル: Association between Olfactory Test Data with Multiple Levels of Odor Intensity and Suspected Cognitive Impairment: A Cross-Sectional Study
著者: Shuichi Sato*, Takao Imaeda, Shunji Mugikura, Naoko Mori, Masaki Takanashi, Kazumi Hayakawa, Tomo Saito, Makiko Taira, Akira Narita, Mana Kogure, Ippei Chiba, Rieko Hatanaka, Kumi Nakaya, Ikumi Kanno, Ryosuke Ishiwata, Tomohiro Nakamura, Ikuko N. Motoike, Naoki Nakaya, Seizo Koshiba, Kengo Kinoshita, Shinichi Kuriyama, Soichi Ogishima, Fuji Nagami, Nobuo Fuse, Atsushi Hozawa*.
*: Corresponding authours
掲載誌: Journal of Alzheimer’s Disease Volume 95 Number 4
掲載日:2023/10/10
DOI:10.3233/JAD-230318