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エイコサノイドやビタミンK代謝の個人差に関連する薬物代謝酵素CYP4F2遺伝子多型の機能解析に関する論文が掲載

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当機構の平塚 真弘准教授、菱沼 英史助教、齋藤 さかえ講師、木下 賢吾教授らの研究によって、エイコサノイドやビタミンK代謝の個人差に関連する薬物代謝酵素CYP4F2遺伝子多型の機能解析に関する論文がDrug Metabolism and Disposition誌に掲載されました。

CYP4F2は、ロイコトリエンB4、プロスタグランジン、アラキドン酸などのエイコサノイドやビタミンE、ビタミンKのω-水酸化反応を触媒する生体内で重要な酵素です。また、再発性多発性硬化症の経口薬であるフィンゴリモドやパフラミジンなどの抗寄生虫プロドラッグなどの薬物代謝にも寄与しています。したがって、CYP4F2活性の変化は、体内のエイコサノイドやビタミンの内因性化合物のレベルに影響を与えるだけでなく、医薬品の効果や副作用にも影響を与える可能性があります。

近年、東北メディカル・メガバンク機構による大規模な日本人集団の全ゲノム解析によって、これまでに低頻度のために見落とされてきたCYP4F2遺伝子多型が多数同定されました。これらの遺伝子多型の中には、日本人集団特有の薬物動態変動を予測する遺伝子多型マーカーが存在する可能性があります。そこで本研究では、日本人8,380人の全ゲノム解析で同定された28種類のCYP4F2遺伝子多型(野生型配列を加えて29種類)について、それらがアラキドン酸代謝に与える影響を遺伝子組換え酵素を作製して網羅的に機能解析しました。

CYP4F2野生型および酵素活性を有する21種のバリアントについて、アラキドン酸ω-水酸化反応の酵素反応速度論的パラメータ(Vmax、S50およびVmax/S50としての固有クリアランスCLint)を決定しました。その結果、野生型と比較して、2種のCYP4F2バリアントはアラキドン酸 ω-水酸化のCLint値が有意に減少しました。また、7種のバリアントでCYP4F2活性が完全に消失することが明らかになりました。したがって、これらの多型を有するヒトでは、通常のエイコサノイド代謝や薬物代謝とは異なる挙動を示すことが示唆されました。特に医薬品では、効果が強く出たり、副作用が起こりやすくなる可能性があります。本研究により、遺伝子多型情報を利用することで、患者個々に最適な医薬品の種類や投与量を決定する安全かつ効果的な未来型医療の臨床応用実現の推進が期待されます。
本論文は、2023年9月29日にDrug Metabolism and Disposition誌の電子版に掲載されました。

本研究は、文部科学省ならびに日本医療研究開発機構(AMED)の下記の事業により行われました。
○ゲノム創薬基盤推進研究事業
「網羅的生体情報を活用したゲノム診断・ゲノム治療に資する研究:ファーマコゲノミクスにより効果的・効率的薬剤投与を実現する基盤研究」、課題名「健常人バイオバンクを活用した薬物代謝酵素遺伝子多型バリアントの網羅的機能変化解析による薬物応答性予測パネルの構築」(JP19kk0305009)
○東北メディカル・メガバンク計画(東北大学)東日本大震災復興特別会計分(JP20km0105001)
○東北メディカル・メガバンク計画(東北大学)一般会計分(JP20km0105002)
○文部科学省先端研究基盤共用促進事業

書誌情報

タイトル:Functional Characterization of 29 Cytochrome P450 4F2 Variants Identified in a Population of 8,380 Japanese Subjects and Assessment of Arachidonic Acid ω-Hydroxylation
著者名:Yu Sato, Eiji Hishinuma, Shuki Yamazaki, Akiko Ueda, Masaki Kumondai, Sakae Saito, Shu Tadaka, Kengo Kinoshita, Tomoki Nakayoshi, Akifumi Oda, Masamitsu Maekawa, Nariyasu Mano, Noriyasu Hirasawa and Masahiro Hiratsuka
掲載誌:Drug Metabolism and Disposition
掲載日:2023年9月29日
DOI:10.1124/dmd.123.001389

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