※本件、11月14日(1600 London time)に掲載を予定されていましたが、
出版社の都合により11月21日(1600 London time)に延期になりました。
東北大学大学院医学系研究科の日高高徳医員(医化学分野・皮膚科学分野)、小林枝里助教(医化学分野)、山本雅之教授(医化学分野・東北メディカル・メガバンク機構 機構長)らは、大気汚染物質がアトピー性皮膚炎の諸症状を引き起こす仕組みの一端を解明しました。これまで、大気汚染とアトピー性皮膚炎の患者数や重症度に相関があることが知られていましたが、その理由は不明でした。今回の成果により、大気汚染物質が転写因子AhRを活性化させることで神経栄養因子arteminを発現させ、皮膚表面の表皮内へ神経が伸長し、過剰に痒みを感じやすい状態を作り出すことがわかりました。過剰な痒みにより皮膚を掻いてしまうことで皮膚バリアが破壊され、皮膚から多くの抗原が侵入してアレルギー性皮膚炎を引き起こすと考えられます(図1)。本研究の結果は、これまでアトピー性皮膚炎の治療に対症療法的に使われてきたステロイド剤などに加えて、AhRの活性を抑える化合物や、arteminの働きを抑える物質をアトピー性皮膚炎の治療薬として利用できる可能性を示しています。
この成果は2016年11月14日(日本時間15日午前1時)以降に英国科学雑誌「Nature Immunology」のオンライン版で公開されました。
【論文名】
The aryl hydrocarbon receptor AhR links atopic dermatitis and air pollution via induction of the neurotrophic factor Artemin
「大気汚染物質によるAhR活性化はarteminの誘導を介してアトピー性皮膚炎様の症状を引き起こす」
掲載誌:Nature Immunology
図1 AhR活性化によるアトピー性皮膚炎発症・増悪メカニズム
本研究では、大気汚染によるアトピー性皮膚炎の発症・増悪のメカニズムを明らかにするため、大気汚染物質によって活性化するAhR転写因子の表皮における機能を解析し、AhRが神経栄養因子arteminの発現を誘導することで痒みに対する過敏性を引き起こし、アトピー性皮膚炎の諸症状の原因となることを明らかにしました。
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