地域医療支援部門の 伊藤貞嘉 教授、東北大学大学院薬学研究科の佐藤博教授らの研究グループにおいて、佐藤恵美子助教、森建文准教授らは、腎臓病患者で筋力の低下と筋萎縮が生じる機序を解明しました。この研究には共同研究グループとして、ToMMoクリニカル・フェロー の三島英換助教、ゲノム解析部門の 三枝大輔 講師、齊藤律水技術補佐員が参加しています。
慢性腎臓病は高血圧や糖尿病等の生活習慣病などを原因として慢性に徐々に腎機能が低下する病態であり、今や我が国の成人の8人に1人が有する国民病です。
これまで慢性腎臓病患者では筋量と筋力の低下が起きやすく、また高齢の腎臓病患者での筋量低下は寝たきりや骨折リスクに加えて死亡リスクをも高めることが知られていました。しかし腎臓病患者で筋量が低下する原因はよくわかっていませんでした。
本研究では、腎臓の機能が低下することで体内に蓄積する「尿毒素」といわれる毒性物質が筋細胞内の代謝変化を引き起こすことが、腎臓病患者での筋肉量低下の引き金になっていることを明らかにしました。
本研究結果は、腎臓病患者における筋肉量低下を抑制する新たな予防法や治療法の開発につながることが期待されます。また腎臓病以外にも加齢、がん、炎症性疾患など他の原因による筋萎縮の病態解明への寄与も期待されます。
本研究成果は、2016 年11 月10 日午後7 時(現地時間11 月10 日午前10 時)に英科学誌Scientific Reports に掲載されました。
【書誌情報】
Metabolic alterations by indoxyl sulfate in skeletal muscle induce uremic sarcopenia in chronic kidney disease
「慢性腎臓病患者においてインドキシル硫酸による骨格筋内代謝変化がウレミックサルコペニアを誘導する」
掲載誌:Scientific Reports
doi:10.1038/srep36618