この度、予防医学・疫学部門分子疫学分野の研究グループによる、三世代コホート調査をもとに妊娠中のカルシウム摂取量と妊娠高血圧腎症のリスクを検討した論文がJournal of Clinical Hypertension誌に掲載されました。
妊娠高血圧腎症は妊婦さんの約3%に発症し、生まれてくる赤ちゃんの低出生体重や妊婦さん自身の将来的な循環器疾患のリスクとなります。これまでの研究では、妊娠中のカルシウムサプリメントの摂取に予防効果があることが報告されていました。しかしながら食事によるカルシウム摂取に関しては研究が少なく、未だ結論がでていませんでした。
今回の研究では、食物摂取頻度調査票と呼ばれるアンケートにより、妊婦さんの食事によるカルシウム摂取量を推定しました。妊娠高血圧腎症の診断は、妊婦健診のカルテを参照して行いました。解析の結果、カルシウム摂取量が少ない人は多い人と比べて妊娠高血圧腎症発症のリスクが1.3倍高いことが明らかになりました。
この研究により、食事によるカルシウム摂取が母親やそのお子さんの健康に重要な役割を持つことが分かりました。妊婦さんへの食生活指導や発症リスクの高い妊婦さんの特定に役立てられると期待しています。
【書誌情報】
タイトル:Dietary calcium intake was related to the onset of pre-eclampsia: the TMM BirThree Cohort Study
著者名:Hisashi Ohseto, Mami Ishikuro, Taku Obara, Keiko Murakami, Tomomi Onuma, Aoi Noda, Ippei Takahashi, Fumiko Matsuzaki, Fumihiko Ueno, Noriyuki Iwama, Masahiro Kikuya, Hirohito Metoki, Junichi Sugawara, Shinichi Kuriyama
掲載誌:Journal of Clinical Hypertension
掲載日:2022年12月28日
DOI: 10.1111/jch.14606