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妊娠中血中代謝物による産後うつ症状の予測 -健やかな母子家庭環境を維持するために-【プレスリリース】

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発表のポイント

・世界に先駆けて産後うつ症状に焦点をあてて妊産婦の血漿メタボロームを大規模に解析した。
・妊娠中後期に比べて産後は多くの血漿メタボロームが上昇し、産後うつに関連して血漿中のクエン酸回路の代謝異常が生じていた。
・血漿中の代謝産物から産後うつ症状を機械学習により予測でき、これらの知見は産後うつ病の病態理解や診療技術の向上に寄与することが期待される。

研究概要

産後うつ病では、妊娠から出産に至る生活習慣、環境、心身状態の変化に関連した様々な代謝産物の変動が生じていることが想定されます。東北大学大学院医学系研究科の兪 志前講師、富田 博秋教授らのグループは、東北大学東北メディカル・メガバンク機構 (ToMMo)が実施している三世代コホート調査で得られた健常者および産後うつ症状を呈する母親の妊娠中後期、および産後の血漿中の代謝産物をガスクロマトグラフィー質量分析で網羅的に解析しました。
その結果、産後うつ症状を示す母親は、その兆候のない母親と比較して、妊娠中後期から産後1ヶ月時点までに血漿中の「クエン酸回路」に関連する代謝産物のプロファイルが異なっていました。さらに、機械学習を用いて、妊娠中後期における血漿中の代謝産物のプロファイルから産後うつ症状の予測を行ったところ、シトシンの減少およびエリトルロースの増加が産後うつ症状を予測するリスク因子として同定されました。
本研究結果成果より、妊娠中後期の代謝異常が産後うつ病の発症と関連する可能性が示唆されました。この知見は、妊産婦の個体差に応じた産後うつ病の予防やケアを行う個別化予防に繋がることが期待されます。また今後、各々の代謝物と精神状態との関係性を明らかにすることで、産後うつ病の病態の理解に繋げられる可能性があります。
本研究成果は、2022年11月24日付でiScienceのオンライン版で公開されました。

図1.妊娠中後期と産後1ヶ月の血漿メタボロームと産後うつ症状との関連の検証
抑うつ兆候のない対照となる妊産婦、および産後うつ症状を呈する妊産婦の妊娠中後期および産後1ヶ月の血漿メタボロームをGC-MS (ガスクロマトグラフィー質量分析) で解析しました。対照となる妊産婦に比べ、産後うつ症状を呈する妊産婦において、妊娠中から産後にかけて異なるパターンを呈するメタボロームの変動を特定しました。さらに、機械学習を用いて血漿中の代謝物を用いた産後うつ症状の予測を行い、予測への貢献が大きい血漿中の代謝物を特定しました。

プレスリリース本文

書誌情報

タイトル:Plasma metabolic disturbances during pregnancy and postpartum in women with depression
著者:Zhiqian Yu, Naomi Matsukawa, Daisuke Saigusa, Ikuko N. Motoike, Chiaki Ono, Yasunobu Okamura, Tomomi Onuma, Yuta Takahashi, Mai Sakai, Hisaaki Kudo, Taku Obara, Keiko Murakami, Matusyuki Shirota, Saya Kikuchi, Natsuko Kobayashi, Yoshie Kikuchi, Junichi Sugawara, Naoko Minegishi, Soichi Ogishima, Kengo Kinoshita, Masayuki Yamamoto, Nobuo Yaegashi, Shinichi Kuriyama, Seizo Koshiba, Hiroaki Tomita.
掲載誌:iScience
掲載日:2022年11月24日
DOI:10.1016/j.isci.2022.105666

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