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転写因子Nrf2は他のbZIP型転写因子よりDNAに強く結合し、酸化ストレス応答やがん化に関わることが明らかに【プレスリリース】

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研究成果のポイント

・ 酸化ストレス応答やがん化に関与する転写因子Nrf2がDNAに結合した複合体の立体構造を解明
・ Nrf2は特徴的なCNCモチーフを持つことで、他のbZIP型転写因子より強く標的遺伝子に結合して発現を厳密に制御
・ 研究成果はNrf2の過剰発現によるがん化やがん治療抵抗性に対する新たな創薬への手がかりを提供

概要

 横浜市立大学大学院医学研究科 生化学 仙石徹准教授、椎名政昭助教、緒方一博教授らの研究グループは、立命館大学生命科学部、理化学研究所生命機能科学研究センター、常葉大学保健医療学部、東北大学東北メディカル・メガバンク機構、東北大学加齢医学研究所との共同研究で、酸化ストレス*1応答*2や肺がんなどのがん化に重要な役割を果たす転写因子*3であるNrf2の立体構造を解明し、Nrf2はbZIP型類似転写因子より強くDNAに結合することで遺伝子発現を厳密に制御していることを明らかにしました。本研究は、Nrf2の過剰発現によるがん化やがん治療抵抗性の詳細なメカニズム理解へ手がかりを提供します。
 本研究成果は、オックスフォード大学出版局の科学雑誌「Nucleic Acids Research」に掲載されました。(2022年12月1日オンライン)

プレスリリース本文

図1 左、Nrf2や他の転写因子の機能ドメインマップ。中央、Nrf2とMafGのDNA結合領域が標的DNAに結合した複合体の立体構造。右、代表的なbZIP型転写因子であるFosとJunが標的DNAに結合した複合体の立体構造。

図2 Nrf2とsMafがFos-Junなどの他のbZIP型類似転写因子の攪乱を受けずに厳密に標的遺伝子の転写を制御するメカニズム。Ub: ユビキチン(タンパク質の分解を導く分子)、AD: 転写活性化ドメイン。

書誌情報

タイトル: Structural basis of transcription regulation by CNC family transcription factor, Nrf2
著者: Toru Sengoku, Masaaki Shiina, Kae Suzuki, Keisuke Hamada, Ko Sato, Akiko Uchiyama, Shunsuke Kobayashi, Asako Oguni, Hayato Itaya, Kota Kasahara, Hirotomo Moriwaki, Chiduru Watanabe, Teruki Honma, Chikako Okada, Shiho Baba, Tsutomu Ohta, Hozumi Motohashi, Masayuki Yamamoto, Kazuhiro Ogata
掲載雑誌: Nucleic Acids Research
DOI:10.1093/nar/gkac1102

用語解説

*1 酸化ストレス:細胞がスーパーオキシドやヒドロキシラジカル、過酸化水素、一重項酸素など反応性の高い活性酸素種に暴露された状態。放射線による酸素の励起やミトコンドリアでの酸化的リン酸化など様々な要因によって細胞内で発生する。

*2 酸化ストレス応答:細胞が活性酸素の産生が増加した酸化ストレス状態や発がん作用を有する親電子物質に曝露された状態に置かれた時、DNAやタンパク質を守るための酵素(解毒酵素、抗酸化物質合成酵素、還元剤NADPHの生成を担うペントースリン酸経路の代謝酵素など)や毒物を排泄するための薬剤トランスポーターなどの遺伝子の発現が活性化されて細胞をダメージから回避する機能。

*3 転写因子:特定のDNA配列に結合して転写を制御するタンパク質。転写を活性化するものと抑制するものが存在する。

 

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