東北メディカル・メガバンク計画地域住民コホート調査において、スパイロメトリーにより得られた呼吸機能検査指標と頸動脈内膜中膜複合体厚(Intima Media Thicknes, IMT)の関連について解析した結果をまとめた論文がJournal of Atherosclerosis and Thrombosis誌に掲載されました。
スパイロメトリーは、肺活量などの肺機能を調べる検査で、慢性閉塞性肺疾患の診断に用いられます。スパイロメトリーから得られた呼吸機能検査指標が高いほど、循環器疾患のリスクが低いことがこれまでの研究で報告されています。また、動脈硬化は循環器疾患のリスクを高めることが報告されていますが、日本人集団において、呼吸機能が動脈硬化と関連するものか調査した研究は限られており、非喫煙者を含み、両者の関連を報告した研究はありませんでした。そこで、地域住民コホート調査のデータを用いて、呼吸機能検査指標である1秒量(FEV1)、努力性肺活量(FVC)と動脈硬化の指標として用いられるIMTとの関連を検討しました。
研究の結果、呼吸機能検査指標が低い人に比べて、呼吸機能検査指標が高い人ほど頸動脈IMTの値が低いことが明らかになりました。この関連は、受動喫煙や高血圧、糖尿病、高コレステロール血症などの動脈硬化の危険因子を考慮した上でも統計学的に有意でした。また、非喫煙者に限定した場合も、両者の間に有意な関連が認められました。呼吸機能検査指標が低い人には動脈硬化の検査が、動脈硬化がある人には呼吸機能検査が必要である可能性が示唆されました。
書誌情報
タイトル:The Association of Lung Function and Carotid Intima-Media Thickness in a Japanese Population: The Tohoku Medical Megabank Community-Based Cohort Study
著者名:Masato Takase, Mitsuhiro Yamada, Tomohiro Nakamura, Naoki Nakaya, Mana Kogure, Rieko Hatanaka, Kumi Nakaya, Ikumi Kanno, Kotaro Nochioka, Naho Tsuchiya, Takumi Hirata, Yohei Hamanaka, Junichi Sugawara, Tomoko Kobayashi, Nobuo Fuse, Akira Uruno, Eiichi N Kodama, Shinichi Kuriyama, Ichiro Tsuji, Atsushi Hozawa
掲載誌:Journal of Atherosclerosis and Thrombosis
Advance online publication: November 04, 2022
DOI:10.5551/jat.63826