東北大学病院消化器内科とToMMoとの共同研究で、免疫抑制療法下の炎症性腸疾患(IBD)患者における流行性ウイルス感染症の抗体測定についての研究結果がScandinavian Journal of Gastroenterology誌電子版に2022年10月12日に掲載されました。
免疫抑制療法を行っていると免疫が低下するために感染症のリスクが高くなるため、積極的なワクチン接種が望まれますが、一方で、治療中の生ワクチン接種は禁忌とされています。しかし、これまで我が国で生ワクチンを要するウイルス(麻疹・風疹・流行性耳下腺炎・水痘ウイルス)に対する抗体価が実際にどうなっているかの調査は十分に行われていませんでした。
そこで今回、免疫抑制療法中のIBD患者を対象にこれらのウイルスに対する抗体価を測定し、東北メディカル・メガバンク計画のコホート調査参加者の一般住民の抗体価と比較しました。その結果、IBD患者で抗体陽性率が低い一方で、患者の中での免疫抑制の程度(単剤/併用)では差が見られませんでした。IBD患者全般で抗体価が低く、治療内容には必ずしも左右されないことが示されました。
今後の診療において、IBD患者には抗体陰性例が一定の割合で含まれることを念頭に、免疫抑制療法の開始前(理想的には診断時)にスクリーニングしていくことが重要であることが示唆されます。
書誌情報
タイトル:Reduced antiviral seropositivity among patients with inflammatory bowel disease treated with immunosuppressive agents
著者名:Hisashi Shiga, Takahiro Takahashi, Manabu Shiraki, Yasuhiro Kojima, Tsuyotoshi Tsuji, Sho Takagi, Keiichiro Hiramoto, Naonobu Yokoyama, Mikako Sugimura, Masahiro Iwabuchi, Katsuya Endo, Motoyuki Onodera, Yuichirou Sato, Yosuke Shimodaira, Eiki Nomura, Tatsuya Kikuchi, Hirofumi Chiba, Shinya Oomori, Hisaaki Kudo, Kazuki Kumada, Satoshi Nagaie, Soichi Ogishima, Fuji Nagami, Yusuke Shimoyama, Rintaro Moroi, Masatake
Kuroha, Yoichi Kakuta, Takashi Ishige, Yoshitaka Kinouchi, Atsushi Masamune
掲載誌:Scandinavian Journal of Gastroenterology
掲載日:12 October 2022
DOI:10.1080/00365521.2022.2132831