予防医学・疫学部門の村上慶子講師らによる、三世代コホート調査をもとにした母親のパーソナリティと産後のメンタルヘルスに関する論文がScientific Reports誌に掲載されました。
パーソナリティは、エジンバラ産後うつ病自己評価票(Edinburgh Postnatal Depression Scale: EPDS)の総得点で評価された産後のメンタルヘルスとの関連が示されてきましたが、EPDSの抑うつ、不安、快感喪失という3つの下位尺度とパーソナリティとの関連は検討されていません。そこで、パーソナリティとEPDSの総得点および各下位尺度で評価された産後のメンタルヘルスとの関連を検討しました。
産後1か月時点でうつ兆候(EPDS総得点9点以上)を有する割合は、13.1%でした。神経症傾向の高い女性はうつ兆候の割合が高く、抑うつ、不安、快感喪失の傾向も高かったです。外向性傾向の高い女性はうつ兆候の割合が低く、抑うつ、不安、快感喪失の傾向も低かったです。非協調性傾向の高い女性はうつ兆候の割合が低く、不安の傾向も低い一方で、非協調性傾向と抑うつ、快感喪失との関連はみられませんでした。
パーソナリティは比較的容易に侵襲なく測定が可能であり、妊娠期は医療関係者が母親と接する機会が多いです。そのため、妊娠中にパーソナリティを測定することは、産後のメンタルヘルスに関するハイリスク者をスクリーニングするのに適している可能性が、本研究から示唆されました。
書誌情報
タイトル:Maternal personality and postpartum mental disorders in Japan: the Tohoku Medical Megabank Project Birth and Three-Generation Cohort Study
著者名:Keiko Murakami, Mami Ishikuro, Taku Obara, Fumihiko Ueno, Aoi Noda, Tomomi Onuma, Fumiko Matsuzaki, Saya Kikuchi, Natsuko Kobayashi, Hirotaka Hamada, Noriyuki Iwama, Hirohito Metoki, Masatoshi Saito, Junichi Sugawara, Hiroaki Tomita, Nobuo Yaegashi, Shinichi Kuriyama
掲載誌:Scientific Reports
掲載日:16 April 2022
DOI:10.1038/s41598-022-09944-w