東日本大震災から10年が経ち、The Tohoku Journal of Experimental Medicine(TJEM)では災害医療のReview Seriesが組まれております。東北メディカル・メガバンク機構予防医学・疫学部門三世代コホート担当の研究者を中心としたメンバーで、三世代コホート調査の結果を中心に東日本大震災後の人々の健康状態について、これまでの様々な災害の健康影響に関する研究も含めたレビューを行いました。
先行研究では、様々な災害において健康への身体的・精神的な影響が報告されております。また、大人の方のみならず、お子さんの健康への影響も懸念されており、広い世代での調査が重要であると考えられます。
東北メディカル・メガバンク計画の三世代コホート調査は、お母さんを中心に、お子さんからお父さん、おじいさん・おばあさんまであらゆる世代の方々にご参加いただいております。お子さんのうち、2009年から2014年にかけて生まれた方の中で生年ごとに体重が在胎週数に対して小さく生まれた方の割合を比較したところ、震災前後で特段の増減は認められませんでした。また、大人の方では、家屋の損壊状況を被災の程度と仮定して、ライフスタイル関連の指標やメンタルヘルスの指標を比較しました。お父さん・お母さんでは、家屋の損壊が深刻であった方ほど、過体重や喫煙の割合が高い結果でした。また、お母さんの間では、家屋の損壊状況が深刻であった方ほど高血圧の割合も高い結果でした。また、うつの傾向がある方の割合は、お父さん、おじいさん・おばあさんで家屋の損壊が深刻であった方ほど高く、お母さんの間では心理的苦痛を抱えている方の割合が高い結果でした。
今後も震災後の人々の健康状態を長期に渡り把握しつつ、それぞれの世代にどのような支援が必要かを検討するためにも三世代コホート調査のような前向きコホート研究が重要と考えます。
TJEM誌は、東日本大震災から10年を経たことを契機に、震災関連のレビューをThe Disaster-Prevention Science Collectionとしてまとめています。本レビュー論文はこの一環として掲載されました。
書誌情報
タイトル:Families’ Health after the Great East Japan Earthquake: Findings from the Tohoku Medical Megabank Project Birth and Three-Generation Cohort Study
著者:Mami Ishikuro, Aoi Noda, Keiko Murakami, Tomomi Onuma, Fumiko Matsuzaki, Fumihiko Ueno, Masahiro Kikuya, Hirohito Metoki, Hiroaki Tomita, Taku Obara, Nobuo Yaegashi and Shinichi Kuriyama
掲載誌:The Tohoku Journal of Experimental Medicine
掲載日:February 23, 2022
DOI:10.1620/tjem.256.93