発表のポイント
・ 日本(東北大学)とオランダ(フローニンゲン大学Lifelines)の公的バイオバンクを利用した一般地域住民の夫婦ペアの生活と健康の関係に関する国際共同研究の成果を論文発表しました。
・ 日本・オランダの一般地域住民の夫婦ペア総計約3万組を対象に生活習慣、医学検査値、疾病の類似性を検討した結果、さまざまな項目で配偶者同士の類似性が確認されました。遺伝的に類似性が低く、生活習慣は類似性が高い夫婦間で多くの相関がみられたことから、生活習慣の重要性が示唆されました。
・ 心血管・代謝疾患予防の新たな方略として、夫婦一緒の保健指導、そして夫婦で励まし合い、競争し合うことによる効果的な生活習慣の変容が期待できます。
概要
日本・オランダの一般地域住民の夫婦ペアを対象に、生活習慣、医学検査値、疾病の類似性を両国の公的バイオバンクを利用し検討しました。日本の情報は東北メディカル・メガバンク計画、オランダはLifelines研究で得られたものです。
喫煙・飲酒・運動などの生活習慣、体重、腹囲、肥満度(Body Mass Index)、血圧、総コレステロール・中性脂肪・HDL-コレステロール・LDL-コレステロールなどの検査値、高血圧・糖尿病・メタボリック症候群の疾患について、配偶者同士の類似性が確認されました。この結果は日本・オランダともに同様でした。
これらの指標から導き出される心血管・代謝疾患リスクが配偶者同士で類似していることから、生活習慣病予防の新たな方略として、健康診断等で夫婦一緒に保健指導を行う、夫婦で励まし合い・競争し合うような環境を作るなどの施策により、効果的な生活習慣への改善が期待できます。また、夫婦は遺伝要因よりも環境要因を共有していることから、環境要因と疾病の関連をより明確にできる可能性があります。
本研究成果は、Atherosclerosis誌にて、8月26日に公開されました。
書誌情報
タイトル:Spousal similarities in cardiometabolic risk factors: A cross-sectional comparison between Dutch and Japanese data from two large biobank studies
日本語タイトル:循環・代謝疾患リスク要因における配偶者同士の類似性:日本・オランダ大規模バイオバンクを利用した横断研究
著者:Naoki Nakaya, Tian Xie, Bart Scheerder, Naho Tsuchiya, Akira Narita, Tomohiro Nakamura, Hirohito Metoki, Taku Obara, Mami Ishikuro, Atsushi Hozawa, Harold Snieder, Shinichi Kuriyama
掲載誌:Atherosclerosis
掲載日:2021年8月26日
DOI: 10.1016/j.atherosclerosis.2021.08.037