予防医学・疫学部門の村上慶子講師らが執筆したパーソナリティと妊娠中の飲酒に関する論文がAddictive Behaviors誌に掲載されました。
妊娠中の飲酒は、胎児に悪影響を及ぼすことが知られています。安全な飲酒の量、安全な飲酒の時期は存在しないとされ、妊娠中は禁酒をすることが推奨されています。パーソナリティが妊娠中の飲酒と関連することが報告されていますが、全て欧米からの報告であり、妊娠中の一時点のみの検討でした。そこで、三世代コホート調査のデータを用いて、パーソナリティと妊娠初期・中期の飲酒、妊娠初期から中期にかけての禁酒との関連を検討しました。
その結果、外向性傾向の高い女性は、妊娠初期・中期の両時点で飲酒をしている割合が高いことが明らかになりました。非協調性傾向の高い女性は、妊娠初期から中期にかけて禁酒をする割合が低く、妊娠中期で飲酒をしている割合が高いことがわかりました。神経症傾向は、妊娠中の飲酒との関連はみられませんでした。
妊娠前からの禁酒が望ましいですが、難しい場合はできる限り早く禁酒をすることが推奨されています。パーソナリティは比較的容易に侵襲なく測定が可能です。妊娠期の早い段階から妊婦と接する機会が多い医療関係者によるパーソナリティの測定は、妊娠中期にまでわたる飲酒リスクの高い女性のスクリーニングに適している可能性が本研究から示唆されました。飲酒のリスクを早期にスクリーニングし介入につなげることで、胎児の健康を守ることができる可能性があります。
書誌情報
タイトル:Maternal personality and alcohol use during pregnancy in Japan: the Tohoku Medical Megabank Project Birth and Three-Generation Cohort Study
著者名:Keiko Murakami, Mami Ishikuro, Fumihiko Ueno, Aoi Noda, Tomomi Onuma, Fumiko Matsuzaki, Hirohito Metoki, Taku Obara, Shinichi Kuriyama
掲載誌:Addictive Behaviors
DOI:10.1016/j.addbeh.2021.107020